自社運営のECサイトにおいて、CVR(コンバージョンレート:顧客転換率)が伸び悩んでいる方も多いはず。ECサイトの売上を向上させるには、CVRが伸び悩む原因を正確に捉え、適切に対処・改善することが重要です。
本記事では、ECサイトのCVRが伸びない3つの要因と具体的な改善施策を紹介します。自社ECサイトのCVRでお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
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コンバージョン率(CVR)とは?
CVRとは、ウェブサイトへアクセスしたユーザーのうち、運営者が設定したコンバージョン(ゴール)地点に至ったユーザーの割合を示した数値のこと。CVRはECサイトや広告の健全化をはかるうえで欠かかすことのできない、重要なデータです。
ゴールであるコンバージョンは、資料請求や会員登録などWEBサイトを運営する目的ごとに異なります。ECサイトにおけるコンバージョンは「商品の購入」です。
ECサイトにおけるCVRの算出方法は、次のとおりです。
コンバージョン率(%)=商品の購入回数÷サイト訪問数(セッション数)×100
仮に、1ヶ月10万セッションのECサイトで2,000個の商品が売れた場合、2,000(個)÷10万(セッション)×100のCVR2%と算出できます。
CVRが高いということは、ECサイトにおける成約率が高いことを表し、流入を増加させることで売上の向上が期待できます。一方CVRが低い場合、ユーザーの訪問数を増加させても商品が売れにくいため、CVRの改善が求められます。
ECサイトのコンバージョン率(CVR)の目安・平均を業種別に紹介
ECサイトのCVRを改善するには、目安となる平均値を理解することが大切。ECサイト全体におけるCVRの平均値は、2~3%といわれています。
業種や企業のブランド力などによっても異なり、大手企業や有名ブランドのECサイトでは、6%を超えるケースもあるようです。
次に、ECサイトの平均CVRを業界別で見ると、下記のとおりです。
業界 | コンバージョン率 |
---|---|
ギフト | 4.9% |
ヘルスケア | 4.6% |
アパレル | 4.2% |
その他 | 3.4% |
スポーツ | 3.1% |
ジュエリー・コスメ | 2.9% |
大手チェーン | 2.3% |
インテリア | 2.2% |
自動車 | 2.2% |
DIY・ツール | 1.7% |
家電 | 1.4% |
平均CVRの上位は、ギフト・ヘルスケア・アパレルとなっており、家電・ホームセンター・自動車は、平均CVRが低い傾向にあります。
ギフト・ヘルスケアは単価が安く、ある程度検討をつけてショップを訪れるため、平均CVRが高いと推測されます。一方、単価が高い家電や自動車関連は購入を躊躇するユーザーも多く、失敗しないようさまざまな商品と比較検討するため、平均CVRが低いと考えられます。
ECサイトのコンバージョン率(CVR)が伸びない3つの要因
ここからは、本題であるECサイトのCVRが伸びない要因を紹介します。
ECサイトのCVRを改善するには、原因の特定が重要。原因が不明確なまま闇雲に施策を打っても、効果が得られないばかりか貴重な時間・コストをむだにする恐れがあるためです。
ECサイトのCVR(コンバージョン率)が伸びない主な要因は、下記の3つが考えられます。
- 市場環境の変化
- 広告のターゲティングがズレている
- 無意識にユーザーへ負担がかかっている
自社のECサイトに該当する点がないか、照らし合わせてみましょう。
市場環境の変化
ひとつ目の要因は、市場環境の変化により、購買意欲の低下・見込み客が他店へ分散するケース。代表的な市場環境の変化は、次の3つがあげられます。
- 市場成長による競合の増加
- 経済悪化に伴う購買意欲の低下
- 季節の移り変わりによる需要の変化
市場が成長すると、多くの企業が参入し競争率が高まります。これにより、自社の見込み客が他社へ分散したり、商品購入時に他店と比較されたりするため、CVRの低下につながります。
また、経済が悪化し先行きが不安な場合は、ユーザーの購買意欲が低下。ECサイトを閲覧することはあっても、商品の購入に至らないケースが増加します。
ECサイトのCVRを考えるうえで注意が必要なのは、季節ものの商品を取り扱う場合です。たとえばマフラーやジャケットを扱う場合、夏の需要は低下します。
ECサイトの目玉が冬向けの商品であれば、夏にCVRが低下するのは当然といえるでしょう。したがって、季節物の商品を取り扱う場合、ほかの季節におけるCVRと比較するのではなく、前年度の同時期の数値をCVRを評価するとよいでしょう。
CVRは、季節や流行など市場環境の変化に大きく左右されるため、ECサイトで取り扱う商品やジャンルも変化に合わせた柔軟な改善が求められます。
広告のターゲティングがズレている
ふたつ目の要因は、 広告のターゲティングがずれていること。
ECサイトに多くのユーザーを呼び込むには、広告の出稿が有効です。リスティング広告やディスプレイ広告を活用し、ECサイトのターゲット層を誘導できれば、コンバージョンに至る可能性が高いでしょう。
しかし、広告から流入するユーザーと自社ECのターゲットが乖離する場合、商品が購入されず、CVRも伸びません。
ユーザーがせっかく広告に興味を持っても、リンク先に自分の求める商品がなければ離脱してしまいます。広告からサイトを訪れているユーザーと、自社ECサイトのターゲットにずれがないか、いま一度確かめてみてください。
無意識にユーザーへ負担がかかっている
みっつ目の要因は、無意識にユーザーへ負担がかかっているケース。
たとえば、
- ユーザーが求める商品を見つけられない
- 入力項目が多くストレスを感じる
- 運営側が売りたい商品のみを目立たせている
- 情報量に過不足がある
などです。
ECサイトを訪れるユーザーは、純粋に買い物を楽しみたいと考えています。対して、構造が複雑であったり運営側の一方的な意向が色濃く反映されていると、ユーザーは負担・ストレスを感じるため、結果的にCVRの低下につながります。
この場合、「ユーザーが負担なく買い物を楽しめるECサイト」への改善が重要です。
ECサイトのコンバージョン率(CVR)を改善する11の施策
ECサイトのCVR改善策は課題の数だけありますが、基本は共通しています。本章ではより効果のある11の施策を紹介します。
- サイトコンセプトの見直し
- TOPページのデザインを改善
- サイト内導線の最適化
- 集客のターゲティングを見直す
- モバイル端末向けに仕様を変更
- 入力フォームをシンプルに
- 配送の利便性向上
- レビュー投稿を集める
- サポート体制の強化
- 商品画像・説明文の充実
- CTA(コールトゥアクション)ボタンの最適化
1.サイトコンセプトの見直し
ECサイトのコンセプトや雰囲気が、扱っている商品に合っていなかったり、増設したページのデザイン・構造にブレが生じ、統一感がなくなっていたりする場合、コンセプトの見直し&改善が必要です。
コンセプトやデザインに統一感がないECサイトは、ユーザーからの信用を獲得しづらい上に、ターゲット層へ強く訴求できないため、結果的にCVRへの悪影響を及ぼします。
たとえば、料理初心者向けのキッチングッズを販売するECサイトで、高級な包丁や板前用のまな板を販売しても、ユーザーの購買意欲は掻き立てられず、CVRの低下を招きます。
いま一度自社のECサイトを見渡し、サイトコンセプト・デザインがターゲットとずれていないかを確かめましょう。
2.TOPページのデザインを改善
必ずしもTOPページを最初に見るとは限りませんが、買い物を続ける場合、多くのユーザーはTOPページを経由します。
ECサイトのTOPページは、いわばサイト全体の目次のようなもの。ユーザーを任意の商品ページまでスムーズに案内するのが役割です。
しかし、ECサイトを運営する中で、商品数の増加やカテゴリー構造の変更があると、TOPページが複雑化し、本来の役割を果たせていないケースがあります。ユーザーを商品ページまで案内できなければ、購入にいたらずCVRの低下につながります。
適切なカテゴライズ・検索窓の設置・掲載情報の厳選などをおこない、TOPページのナビゲーション機能を改善してCVRの向上を目指しましょう。
3.サイト内導線の最適化
各ページの見やすさはもちろんですが、ページを移動する際の操作性や商品の探しやすさも重要です。ECサイトは全体の構造を把握しづらいため、サイト内の導線に気を配る必要があります。
仮に、商品ページへすぐにたどり着けなければ、ほかのECサイトに移ってしまう恐れがあります。ユーザーの行動パターンを把握したうえで、求める商品ページへ到達しやすくスムーズに買い物ができるよう、サイト内導線の改善を図りましょう。
また、ECサイトの目次であるTOPページへいつでも戻れるよう、デザインの工夫も必要です。導線を見直す際は、自分たちでテスト注文を実施し、わかりにくいところはないか、導線が切れていないかを確認するのがおすすめです。
4.集客のターゲティングを見直す
広告から流入するユーザーとECサイトが求めるターゲット層が異なる場合、集客のターゲティングを見直してCVRの向上を目指すのも有効です。
ターゲティング広告を例にすると、50代の男性を対象に広告を出稿して結果が出なかったとします。この場合、商品を購入した顧客の情報を集計してターゲットを改善。広告の対象を調節することで、CVRの向上が期待できます。
また、広告のターゲットのみならず、ECサイト自体のターゲットが誤っている可能性もあるため、顧客情報や競合ECサイトを参考に、ターゲットの修正と属性に合わせた広告の露出をすすめましょう。
5.モバイル端末向けに仕様を変更
近年、EC市場におけるスマートフォン比率が非常に高まっています。そのため、モバイル端末向けにECサイトの仕様を最適化することが必須です。
モバイル端末は画面が小さくPCよりも操作性に劣るため、入力ミス・誤操作を防止する利便性の高いサイトへのリニューアルが必要です。
スマートフォン向けの仕様を考える際は以下のポイントを参考にしてください。
- スマートフォンの利用シーンと環境
- 画面設計は「Simple」「Clean」「Powerful」に
- スクロールを止めるコンテンツ
- タップしてもらいたいパーツは親指周辺に置く
- 申し込みのハードルを低くする
- 入力項目は少なく
- タップ可能な項目は間隔を開ける
6.入力フォームをシンプルに
ECサイトの入力フォームが複雑な場合、入力に手間がかかり離脱につながります。
入力フォームでの離脱は、購入意欲があるユーザーを取りこぼす致命的な機会損失です。ユーザーの負担をできるだけ抑え、入力作業の簡略化を目指しましょう。
入力情報の最適化を図るには、下記の4つが有効です。
- 入力情報を絞る
- 自動入力・入力補助機能を実装
- リアルタイムなエラー表示機能
- 入力の進捗状況を示す
ただし、入力フォームの改善には、時間・労力がかかる上に、プログラミングの技術・知識が求められます。万が一、自社リソースでの実施が難しい場合は、EFO(エントリー・フォーム・オプティマイゼーション:入力フォーム最適化)ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
7.配送の利便性向上
近年のECサイトにおいて、配送の利便性は重要度が高まっています。翌日配送や送料無料、日時指定などのサービスがあると、ユーザーの商品購入ハードルが下がり、CVRの改善に効果的です。
消耗品などを扱うECサイトであれば、配送の利便性が定期購入・リピーターの獲得につながるでしょう。ただ、扱う商品や利益率の関係で、実現可能な配送サービスが異なります。
一度に配送サービスの拡充をおこなうと、収益性の悪化にもつながるため、段階的に様子を見ながら改善するとよいでしょう。
8.レビュー投稿を集める
ECサイトは商品を手に取って実物を確認できないため、不安を抱きながら商品を購入するユーザーが多くいます。こうした購入時の不安を取り除くためには、レビューを集めることが有効です。
レビューは実際に商品を購入したユーザーのリアルな声が寄せられるため、商品・サービスの良し悪しを判断する材料になります。高評価のレビューが複数投稿されていれば、購入を迷うユーザーの不安が取り除かれ、CVR向上が見込めるでしょう。
ただ、ユーザーに対してレビュー投稿の過度な催促をすると、顧客満足度の低下や低評価につながります。そのため、商品が届くころや商品を使ったであろうタイミングで、レビュー投稿のお願いと、それに伴うクーポン発行の旨をメールで送るなどのアプローチが有効です。
クーポンによるコストが懸念されますが、次回への販売促進と考えることもできます。レビュー投稿を集め、ユーザーの不安材料を少しでも抑制することが大切です。
9.サポート体制の強化
ECサイトのCVR改善では、ユーザーからの問い合わせに対して、迅速かつ丁寧に対応できるようサポート体制を強化することが必要です。
問い合わせに対するカスタマーサポートはもちろん、購入後のアフターフォロー・返品対応をおこなうことで、顧客満足度の向上につながります。
また、リピーターの獲得にも効果的で、ユーザーとの信頼関係を築くことができれば、ロイヤリティーの高いユーザー育成も実現可能です。ただし、サポート体制を人手でまかなう場合、コストの増大が懸念されます。
サポートに対するリソースが足りていない場合は、チャットボットや部分的なアウトソーシングを検討し、自社の負担を考慮した改善をすすめましょう。
10.商品画像・説明文の充実化
商品画像・説明文は、ユーザーが購入前に得られる情報量に直結するため、購買行動に大きく影響を与えます。
これらが不十分な場合、ユーザーにとって不安要素が多く感じられ、CVRの低下につながります。
商品画像は多角的に撮影するのが望ましく、色合いや質感が実物と乖離していないものが最適です。また、実際に商品を使用している画像を挿れることで、ユーザーが商品購入後のイメージを掴みやすく、購買意欲を高められます。
説明文には、商品の詳細とターゲットが求めている情報を網羅的に記載しましょう。
商品の魅力はシンプルかつ短い言葉で表現し、ユーザーの購買を促しましょう。商品画像・説明文はユーザーの不安材料を取り除き、なおかつ購買を促すチャンスです。
改善の際には、CVRなどの数値を参考に、少しずつ最適化するのがおすすめです。
11.CTA(Call To Action)の最適化
CTAは「Call To Action」の略で、Webサイトを閲覧しているユーザーに特定の行動を喚起させるための仕掛けのことを指します。
EC・ネットショップにおけるCTAは
- 商品詳細をみる
- カートへ追加
- 購入する
といった、コンバージョンへ繋げるためのボタン、リンク、バナーなどが該当します。
このCTAのクリック率が直接CVRにつながってくるため、大切な要素です。CTAのクリック率の改善は以下のポイントをチェックしましょう。
- CTAをクリックしたら何が得られるのかが記載されているか
- CTAの視認性が高いか
- クリックできると要素として認識されているか
ECのCVR向上に役立つ3種類のサービス
ECサイトのCVR改善で役立つ3つのサービスを紹介します。
- レコメンドエンジン
- ウェブ接客サービス
- 決済サービス
上記サービスを利用することで、リソースの補填・改善作業の効率化、改善精度の向上などが期待できます。CVR改善に不安をおもちの方は、ぜひ参考にしてください。
1.レコメンドエンジン
レコメンドエンジンとは、サイトを訪れたユーザーの行動パターンや購入履歴を収集・分析し、各ユーザーに最適な商品を提案する機能のこと。ECサイトを利用しているとよく目にする「おすすめの商品はこちら」などの項目が、レコメンドエンジンによるものです。
ユーザーの検索履歴・購入履歴を元に、興味・関心のある商品を自動で表示するため、CVRの向上が期待できます。
2.ウェブ接客サービス
ウェブ接客ツールとは、ECサイトを訪れたユーザーに対して、チャットボットやチャットツールで接客を提供するサービスのこと。ECサイト利用におけるサポートや商品提案をおこないます。
実店舗のような接客を提供することで、顧客満足度を高め、CVRの向上やリピーターの獲得につなげられますす。各サービスごとに費用面・搭載機能が大きく異なるため、導入目的を明確にし慎重にサービスを選定しましょう。
3.決済サービス
昨今のECサイトでは、決済サービスの豊富さがコンバーションを大きく左右しています。クレジットカード・電子決済のポイントを目当てにしているユーザーや、キャッシュレスにより現金を持たないユーザーなどが増加しているためです。
ユーザーが普段利用する決済サービスに対応していれば、ECサイトからの離脱を防止できるでしょう。CVRを改善するには、主要な決済サービスを網羅的に用意し、ユーザーの離脱防止につとめることが大切です。
【要注意】仮説なきCVR改善は失策に終わる
ECサイトのCVRを改善する際には、なぜCVRが低いのかを模索し、仮説を立てることが重要です。仮説を立てずに闇雲な施策を打っても、成果が得られず、コスト・時間・労力をむだにする可能性が高いためです。
CVRが伸びない要因は、サイト構造・商品ラインナップ・集客などさまざまな要素が絡み合っているケースが多く、短期間で解決できる問題ではありません。したがって、ECサイトへの流入やユーザーの行動パターン、ユーザーニーズなどを調査し、収集したデータをもとに信憑性の高い仮説の立案&施策の検討が求められます。
ECサイトの売上向上を図るためにも、まずはCVRが伸び悩む原因の追求に取り掛かりましょう。
ECサイトのCVRを改善し、売上の最大化を図ろう
この記事では、ECサイトにおけるCVRの改善施策を紹介しました。
今回紹介した改善施策は、下記のとおりです。
- サイトコンセプトの見直し
- TOPページのデザインを改善
- サイト内導線の最適化
- 集客のターゲティングを見直す
- モバイル端末向けに仕様を変更
- 入力情報を絞る
- 配送の利便性向上
- レビュー投稿を集める
- サポート体制の強化
- 商品画像・説明文の充実
- CTA(コールトゥアクションボタン)の最適化
ECサイト全体における平均CVRは、2〜3%といわれています。CVRの改善をおこない、まずは業界別の平均CVRを目指しましょう。
また、どの施策を行うべきかは、それぞれが立っている状況によって異なります。適切な施策を選ぶことができれば、効率的にCVR改善が可能です。とりあえず施策を試すのではなく、自社の課題を見極めた上で、CVR改善施策に取り組むことをおすすめします。
弊社「JPholic株式会社」は自社ECサイトで培った知見をもとに、マーケティング支援・ECサイトのコンサルティング事業をおこなっています。ECサイトのCVR向上に欠かせないマーケティングを、戦略立案から施策の実施まで一貫してサポート。
ECサイトのマーケティング改善をご検討中の方は、お気軽にお問い合せください。