ECの集客手段としてオウンドメディアを検討すると、たいてい「何を書くか」から考え始めます。しかし実際に成果が分かれるのは、その前の段階です。
オウンドメディアを「どのURLに置くか」で、記事の評価がECサイト本体に積み上がるかどうかが決まります。ここを決めないまま記事を書き始めると、半年後に「アクセスは増えたのに商品が売れない」「ブログだけが伸びてショップは伸びない」という状態になりがちです。しかも設置場所は、後から変えると検索エンジンの評価がほぼやり直しになります。
この記事では、ECのオウンドメディアの設置場所を3つのパターンに整理し、実際に成果を出している4社が「どのURL構造で」「どのカートを使って」運営しているかを調査した結果をまとめます。あわせて、使っているカートによって選べるパターンが決まってしまう点も、各社の公式情報をもとに解説します。
EDITOR JPholic株式会社 ECNOW 編集部
ECNOWはJPholic株式会社が運営する、ネットショップ情報メディアです。30社を超えるECコンサルティング実績や自社ECの運営経験をもとに、「これからECをはじめる」「ECをいまよりもっと活用したい」という声にお応えします。
ECのオウンドメディアとは:商品ページの外側で「買う理由」を作るコンテンツ群のこと
オウンドメディアとは、自社が所有・運営するメディアの総称です。広義にはホームページやSNSアカウント、紙のパンフレットも含まれますが、ECの文脈では「自社で運営するブログやコンテンツサイト」、あるいは「ショップ自体をメディア化する取り組み」を指すのが一般的です。
ここで押さえておきたいのは、ECのオウンドメディアには、一般的なオウンドメディアにはない特徴があるということです。
購入導線が、同じサイトの中にあります。
BtoBのオウンドメディアであれば、記事を読んだ人に資料請求や問い合わせをしてもらい、そこから商談へ進みます。間に人が入り、時間もかかります。一方ECでは、記事を読んで「これいいな」と思った人が、その場でカートに入れて決済まで完了できます。記事から商品ページまでの距離が数クリックしかないのです。
この距離の近さが、ECのオウンドメディアの強みであり、同時に設置場所が重要になる理由でもあります。記事とショップが別のドメインに分かれていると、この「数クリックの近さ」が失われるだけでなく、検索エンジンから見ても別々のサイトとして扱われてしまいます。
【コラム】「オウンドメディア」という言葉の由来
マーケティングでは、媒体を3つに分けて呼び分けます。自社で所有する「オウンドメディア」、口コミやメディア掲載で得る「アーンドメディア」、広告費を払って露出する「ペイドメディア」の3つです。オウンドメディアという呼び名は、この整理から来ています。
SNSはプラットフォームの仕様変更ひとつでリーチが激減し、広告は出稿をやめた瞬間に流入がゼロになります。掲載する内容も掲載し続ける期間も自社だけで決められるのは、3つの中でオウンドメディアだけです。ただし3つは対立するものではなく、記事をSNSで拡散し、反応がよかった記事を広告で押し込む、といった組み合わせが現実的な運用になります。SNS側の設計については【初心者向け】ECサイトのSNS集客はじめ方ガイド|主要SNSの使い分けと運用のコツもあわせてご覧ください。
オウンドメディアが効くのは「商品名で検索されない店」(全部のECに必要なわけではない)
先に、やらなくていいケースの話をします。オウンドメディアは立ち上げに時間がかかり、成果が出るまでにも時間がかかります。向いていない商材で始めてしまうと、労力に見合いません。
効果が出やすいのは選ぶのに知識が要る商品
買う人が「何を基準に選べばいいか分からない」状態にある商品は、オウンドメディアが強く効きます。選び方を教えるコンテンツそのものが、購入の後押しになるからです。
- 調味料・お茶・コーヒーなど、産地や製法で味が変わり、違いが説明を要するもの
- 器・道具・家具など、使い方や手入れの方法まで含めて買うもの
- 化粧品・サプリなど、成分や使う順番の知識が購入判断に直結するもの
- 自社で企画・製造したオリジナル商品で、そもそも商品名が知られていないもの
共通しているのは、商品名を知らない人に、まず「その商品カテゴリの選び方」から説明する必要があるという点です。この説明は商品ページには収まりきりません。だからオウンドメディアが要ります。
自社ブランドを育てるD2Cとの相性がよいのもこの理由からです。ビジネスモデルの全体像はD2C(D to C)とは?ビジネスモデルとブランド事例を紹介で解説しています。
効果が出にくいのはどこの店で買っても中身が同じ商品
逆に、他社が作ったメーカー品を仕入れて売っている場合、オウンドメディアの効果は限定的です。具体的には、次のような商品です。
- 家電・PC周辺機器・カメラなど、メーカーと型番で指名買いされるもの(「シャープ KI-PX70」のように型番そのもので検索される)
- プリンターのインク・電池・電球・浄水器のカートリッジなど、対応型番で選ぶ消耗品や交換部品
- 本・CD・DVD・ゲームソフトなど、どの店で買っても中身がまったく同じもの
- ネジ・工具・建材・梱包資材など、規格が決まっていて銘柄で選ばれないもの
共通しているのは、買う人がすでに「何を買うか」を決めていて、あとは「どこで買うか」を価格と配送スピードで比べているだけという点です。「エアコンの選び方」を丁寧に書いても、読者は結局その足で価格比較サイトへ行き、1円でも安い店で型番を買います。
この場合に効くのは、記事を増やすことではなく、商品ページ自体の作り込みと、価格・配送・在庫の条件です。同じ商品を扱う店が他に何十とあるなら、記事より先に商品ページを直したほうが売上に近いと考えてください。商品ページの改善は【初心者向け】ECサイトに必要なページ完全ガイド|最低限そろえるべき基本ページとは?が参考になります。
判断の目安はサーチコンソールの検索クエリで決められる
自社がどちらのタイプか迷ったときは、Googleサーチコンソールの「検索パフォーマンス」を開き、自社サイトにどんな言葉で人が来ているかを見てください。確認するのは1点だけで、「店名・自社商品名以外の言葉」で来ている人がいるかどうかです。
| 上位に多く並んでいる言葉 | 今どういう状態か | 次にやるべきこと |
|---|---|---|
| 自社の店名・自社商品名 | すでに店を知っている人しか来ていない | 新規の入り口としてオウンドメディアが効く |
| 「〇〇 選び方」「〇〇 違い」など、商品を知らない人が使う言葉 | 知識を求めている人がすでに来ている | 記事を増やせば伸びる余地が大きい |
| 他社メーカーの型番・製品名 | 価格比較の土俵に立っている | 記事より、商品ページと価格・配送条件の見直しが先 |
1行目と3行目はどちらも「すでに買うものが決まっている人」ですが、決めているのが自社商品なのか他社のメーカー品なのかで、打ち手が正反対になります。ここを取り違えないでください。
サーチコンソールをまだ導入していない場合は、Googleサーチコンソールとは?基本的な使い方を解説!ネットショプ運営者さま必見ですから設定してください。オウンドメディアの成果測定でも必須のツールになります。
最初に決めるのは「どこに作るか」(URLが分かれると検索評価も分かれる)
ここからが本題です。ECのオウンドメディアの設置場所は、大きく3つのパターンに分けられます。

なぜこれが重要かというと、検索エンジンは「同じドメインかどうか」でサイトを区切って評価するからです。記事が集めた被リンクや検索評価を、商品ページの評価に合流させたいなら、同じドメインに置くのが最短になります。別ドメインに置けば、ゼロから2つ目のサイトを育てることになります。
パターン①:ECと同じドメインのサブディレクトリに置く(基本形)
https://example.com/blog/ のように、ショップと同じドメインの下の階層に記事を置く形です。
記事も商品ページも1つのドメインに集まるため、記事が獲得した評価がショップ全体に反映されます。ユーザーから見ても、記事から商品ページへ移動するときにドメインが変わらないので、離脱しにくくなります。選べるならこの形が基本です。
実際にこの形をとっている例を調べると、以下のようになっていました(2026年8月時点で確認)。
| ショップ | ECサイト | 記事の置き場所 |
|---|---|---|
| 北欧、暮らしの道具店 | hokuohkurashi.com | hokuohkurashi.com/note/ |
| パンと日用品のお店わざわざ | waza2.com | waza2.com/blogs/yomimono/ |
どちらもドメインは1つだけで、記事はその下の階層に収まっています。
パターン②:サブドメインに置く(カートにブログ機能がないときの現実解)
https://blog.example.com/ のように、ショップとは別のサブドメインに記事を置く形です。
使っているカートにブログ機能がない、あるいは機能が貧弱で記事が書きにくい場合、別サーバーにWordPressを立ててサブドメインで運用することになります。妥協案に見えますが、実際にはこの形をとっている店は多く、成果も出ています。
山口県の光浦醸造がこの形です。ECサイト本体はカラーミーショップで mitsuura.jp に構築されており、読み物である「Journal」は blog.mitsuura.jp のWordPressで運営されています。カラーミーショップにはブログ機能が現在提供されていないため(詳細は後述)、この構成は必然的な選択といえます。
サブドメインの弱点は、検索エンジンから別サイト扱いされる可能性があることと、サーバーやWordPressの管理が別途発生することです。逆に利点は、カートの制約を受けずに自由にコンテンツを作れる点にあります。
パターン③:メディアをルートに置きECをサブドメインに移す(メディア主導型)
3つ目は、パターン②の逆転版です。メインのドメインをメディアが使い、ショップのほうをサブドメインに移します。
醤油のセレクトショップ「職人醤油」がこの構成です。
- メディア(醤油の知識・蔵元紹介・レシピ):
s-shoyu.com(ルートドメイン) - オンラインストア:
store.s-shoyu.com(Shopifyで構築)
この形が選ばれるのは、事業の入り口が「商品を探している人」ではなく「知識を探している人」である場合です。職人醤油の場合、全国の醤油蔵をめぐった取材記録や醤油の製法解説そのものが集客の中心にあり、ストアはその出口として機能しています。メディアが主でECが従、という力関係がURLに現れています。
ただしこの構成は、メディアで十分な集客ができている前提でしか成立しません。これから立ち上げる段階でこの形を選ぶのは危険です。まずパターン①で始め、メディアが主軸になってきた段階で検討するものと考えてください。
Googleは3つとも扱えるがまとめられるならまとめたほうがいい
サブディレクトリとサブドメインのどちらがSEOに有利かは長く議論されてきましたが、Googleの見解ははっきりしています。検索エンジンとしてはどちらも問題なく扱える、というのが公式の立場です。
ただしGoogleのJohn Mueller氏は、それに続けて「一般的には同じものとして見ています。個人的にはできるだけまとめておこうとします。同じサイトなのであれば同じサイトに置き、本当に少し性質が違うものだけサブドメインを使います」という趣旨の補足をしています(Search Engine Journalによる発言の記録)。
つまり、技術的にはどちらでも成立するが、同じ事業の一部ならまとめておくほうが素直ということです。加えて実務上、サブドメインはサーチコンソールで別プロパティとして登録・管理する必要があり、運用の手間も増えます。
そのうえで最も重要なのは、どのパターンを選ぶにせよ、最初に決めて途中で変えないことです。URLを移すとリダイレクト設定が必要になり、正しく設定しても評価の回復には時間がかかります。記事が増えてからの引っ越しほど面倒な作業はありません。
選べるパターンは使っているカートで決まる
ここが実務上いちばん詰まるところです。「サブディレクトリが基本」と分かっても、使っているカートがそれをサポートしていなければ選べません。
主要なECカートについて、各社の公式情報をもとに現状を整理しました(2026年8月時点)。
| カート | ブログ機能 | 記事のURL | 現実的に選べるパターン |
|---|---|---|---|
| Shopify | 標準搭載 | ショップと同じドメインの /blogs/ 配下 | ① |
| makeshop | 標準搭載+WordPress連携オプション | ショップと同じドメイン配下 | ① |
| futureshop | CMSサーバー(VPS)オプションでWordPressを設置 | 契約ドメイン配下 | ① |
| BASE | ブログApp(無料) | ショップと同じドメイン配下 | ①(ただし独自ドメインに制約あり) |
| カラーミーショップ | 現在は新規提供なし | ー | ②または③(別途WordPressを用意) |
| STORES | なし(note連携で代替) | note.com配下 | ショップと別ドメインで用意(持ち込み・サブドメインとも不可) |

Shopify・makeshop・futureshopは同じドメイン配下に記事を置ける
Shopifyはブログ機能を標準搭載しており、追加費用なしで使えます。記事のURLは 独自ドメイン/blogs/ブログ名/記事名 という構造になります。前述のわざわざが waza2.com/blogs/yomimono/ で「よきマガ」を運営しているのが、まさにこの標準機能をそのまま使った例です。Shopifyの全体像はShopifyでネットショップを制作!気になる評判、事例、手数料は?をご覧ください。
makeshopは標準のブログ機能に加えて、別サーバーに置いたWordPressをショップと同じドメイン配下に見せる「WordPress連携オプション」を提供しています。標準ブログでは物足りない場合に、WordPressの自由度を保ったままパターン①を実現できる仕組みです。詳しくはMakeShopでネットショップを制作!気になる評判、事例、手数料は?もあわせてご覧ください。
futureshopは「CMSサーバー(VPS)オプション」を契約することで、ショップの独自ドメイン配下でWordPressを動かせます。店舗ブログ、コーディネート、レシピブログなどを複数構築できる設計です。公式サイトの記載では初期費用5,000円・月額3,800円で、容量は30GBとなっています。futureshopでネットショップを制作!気になる評判、事例、手数料は?もご参照ください。
BASEはブログAppが無料だがルートドメインが使えない点に注意
BASEは「ブログApp」を無料で提供しています。記事に商品リンクを埋め込めるほか、特定の記事をトップページに固定して「お知らせ」として使うこともできます。ショップに追加する形なので、記事はショップと同じドメイン配下に入ります。
ただし、独自ドメインの扱いに固有の制約があります。BASEの独自ドメイン設定はCNAMEレコードを使う方式のため、サブドメインのないルートドメイン(https://example.com)は設定できません。また、https://example.com/shop/ のようなサブディレクトリ形式にも対応していません(BASE公式ヘルプ)。
この制約が何を意味するかというと、BASEで独自ドメインを使う場合、ショップは shop.example.com のようなサブドメインに置くことになります。そのうえで別途WordPressのメディアを持ちたければ、ルートドメイン側にWordPressを置く構成、つまりパターン③に近い形が自然な選択肢になります。ネットショップサービス「BASE」の機能、費用の詳細、メリットやデメリットを徹底解説もあわせてご確認ください。
カラーミーショップとSTORESは外部にメディアを用意する(選べるパターンは異なる)
カラーミーショップは、無料のショップブログを2015年6月25日に提供終了しています。代替として案内されていた有料オプション「ショップブログプラス」も、2021年2月28日をもって新規受付を終了しました。つまり、これから新規にカラーミーショップでブログ機能を使うことはできません。
先に挙げた光浦醸造がサブドメインにWordPressを立てているのは、この制約への対応です。カラーミーショップでオウンドメディアを持つなら、同じくWordPressをサブドメインに用意するパターン②が基本になります。あわせて、カラーミーショップはショップ自体を独自サブドメイン(shop.example.com など)で運用できるため、ルートドメイン側にWordPressを置くパターン③も選べます。ただし独自サブドメインでの運用にはムームードメインでのドメイン管理が必要です。カラーミーショップでネットショップを制作!気になる評判、事例、手数料は?もご覧ください。
STORESにはブログ機能がなく、代わりにnoteとの連携機能が用意されています。これはnote上でSTORESの販売商品を一覧表示できるもので、記事はnote.com配下に置かれます。手軽に始められる反面、記事の検索評価はnote.com側に積み上がり、自社ドメインには蓄積されません。コンテンツを長期の資産にしたいのであれば、別途WordPressを用意する判断が必要になります。ただしSTORESは、すでに保有している独自ドメインを持ち込むことも、ショップを独自サブドメインで運用することもできません。取得したドメインの持ち出しも不可のため、WordPressを用意する場合はショップとは別のドメインになります。カラーミーショップと違い、ルートドメインにメディアを置くパターン③は選べません。
成功事例4社に共通するのは「商品を売らない記事」を抱えていること
ここまでURL構造の話をしてきましたが、器を用意しただけでは成果は出ません。実際に成果を出している4社が、何をどう置いているかを見ていきます。
北欧、暮らしの道具店:読み物を /note/ に集約し売上84.9億円まで伸ばした
ECのメディア化を語るうえで外せないのが、株式会社クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」です。
読み物は hokuohkurashi.com/note/ に集約され、商品ページと同じドメインに収まっています。コンテンツは記事だけでなく、スタッフの愛用品紹介やレシピといった連載、YouTube動画、ポッドキャストにまで広がっており、「買い物する場所」というより「毎日見に行く場所」として設計されています。

同社は東証グロース市場に上場しており(証券コード7110)、業績が公開されています。2025年7月期の連結売上高は前期比21.1%増の84億9,000万円で、うち「北欧、暮らしの道具店」事業は同23.8%増の82億6,947万円でした。さらに、アパレルや雑貨、化粧品などのプライベートブランド商品が売上の5割超を占めるまでに拡大しています。
この「PBが5割超」という数字が、オウンドメディアの効果を端的に示しています。メーカー品ではなく自社商品が売れるということは、商品名で検索されて買われているのではなく、メディアを通じてブランドが信頼されて買われているということです。
なお同社は2026年7月期も成長を続けており、第3四半期累計で売上高79億5,800万円(前年同期比22.7%増)、営業利益13億4,000万円(同53.9%増)を計上、通期では売上高102億円を見込んでいます。期末決算の発表は2026年9月14日に予定されています。最新の数値はクラシコムのIR情報で確認できます。
もちろんこの成長がオウンドメディア単独の成果というわけではなく、商品開発や広告投資も寄与しています。ただし、その全体の土台に「読み物で集めた読者」があることは、同社の事業構造からも明らかです。
パンと日用品のお店わざわざ:Shopify標準のブログ機能だけで運営している
長野県で自家製酵母のパンと日用品を販売する「パンと日用品のお店わざわざ」は、Shopifyで構築されています。
注目したいのは、特別な仕組みを入れず、Shopifyの標準ブログ機能だけでメディアを運営している点です。読み物は waza2.com/blogs/yomimono/ の「よきマガ」、お知らせは waza2.com/blogs/news/ と、用途ごとにブログを分けて使い分けています。
内容も、商品の紹介にとどまりません。「いくつになっても、美しくありたい」といった美容の話や、「今宵の一杯。」というエッセイの連載など、その場で商品を売らない記事が並んでいます。

同社は2023年6月21日にB Corp認証を取得しています。これは公益性を掲げる企業に与えられる国際的な民間認証で、取得までにおよそ2年半を要し、評価スコアは初回の53点から80.4点まで積み上げたと自社ブログで公表しています。こうした経営の内側を書いた記事が、そのまま「この店から買いたい」と思わせる材料になっています。
予算をかけてメディアを構築しなくても、カートの標準機能と書く内容次第で十分に機能することを示す例です。
職人醤油:400軒超の蔵の取材記録がそのまま商品説明になっている
「職人醤油」は、日本各地の蔵から醤油をセレクトし、100mlの瓶で販売するセレクトショップです。前述のとおり、メディアがルートドメイン、ストアが store.s-shoyu.com というパターン③の構成をとっています。
コンテンツの中心にあるのは、全国400軒以上の醤油蔵をめぐった取材記録です。ほかにも醤油の種類・製法・歴史といった知識コンテンツ、「卵黄の醤油漬け」「バニラアイスと醤油」といった使い方の提案、連載エッセイが並びます。

この構成が優れているのは、取材記録がそのまま商品の説明を兼ねている点です。醤油を100mlの小瓶で売るという商売は、「なぜこの蔵の醤油なのか」を説明できなければ成立しません。蔵の取材記事がその説明を担い、読んだ人が納得したうえでストアへ移動する流れができています。
メディアが集客し、ストアが受け止める。この役割分担がURL構造にそのまま表れている例といえます。
光浦醸造:カラーミーショップの制約をサブドメインのWordPressで回避している
山口県で保存食や調味料を製造・販売する「光浦醸造」は、カラーミーショップでECサイトを構築しつつ、読み物を blog.mitsuura.jp のWordPressで運営しています。
「Journal」と名付けられたこのブログは、「Information」「Food Life」「Products」「ebb flow」「Hackoh」「Letters」といったカテゴリに分かれ、2026年7月にも更新が続いています。主力商品はハート型のレモンが入った「CANDY LEMON TEA」をはじめとするレモンティーですが、記事は商品紹介に限らず、食の話や自社ブランドの背景にまで及びます。

ここで見るべきは、カートの制約が、コンテンツの質を決めるわけではないということです。カラーミーショップにブログ機能がないという条件のもとで、サブドメインにWordPressを立てるという現実的な解を選び、更新を続けています。パターン②でも十分に運用できることを示す例です。
4社に共通するのは記事の目的を「今日の売上」に置いていないこと
URL構造も規模もばらばらな4社ですが、コンテンツには共通点があります。
- その場で商品を売らない記事が相当な割合を占める:エッセイ、蔵の取材、暮らしの話など
- 書き手の顔や考え方が出ている:スタッフの愛用品、経営方針、生産者の紹介
- 更新が途切れていない:4社とも直近まで記事が追加されている
- 扱う商品が「説明を要するもの」である:醤油、パン、日用品、保存食
逆にいえば、商品紹介だけを並べた更新は、オウンドメディアとしては機能しにくいということです。売り込みのない記事があるからこそ、読者は「買わされる場所」ではなく「読みに行く場所」として認識します。そして読みに来た人が、必要になったときに買っていきます。
立ち上げ手順は5段階(順番を守ることが成否を分ける)
設置場所とコンテンツの方向が見えたら、実際の立ち上げに入ります。順番が重要です。
1. 設置場所を決める:後から変えると評価がやり直しになる
最初にやるのはURL構造の決定です。前述の3パターンから、使っているカートで選べるものを決めます。
ここを後回しにして「とりあえず無料ブログで書き始める」と、記事が増えてから移転することになります。移転にはリダイレクト設定が必要で、正しく設定しても検索評価が戻るまでには時間がかかります。記事を1本も書く前に決めてください。
2. コンセプトを一文で言い切れるまで絞る
「誰に、何を届けるメディアか」を一文で書けるまで絞り込みます。書けないうちは、記事のテーマが毎回ぶれます。
職人醤油であれば「醤油の選び方が分からない人に、蔵ごとの違いを伝える」、わざわざであれば「よい暮らしの道具を長く使いたい人に、その使い方と考え方を伝える」といった具合です。自社商品との関連が説明できないコンセプトは、アクセスが増えても売上につながりません。
コンセプトの立て方は売れるネットショップはコンセプトで決まる|作り方・考え方完全ガイド、ブランドとしての一貫性はECサイトにおけるブランディングの重要性とは?手順や方法と合わせて徹底解説。で詳しく解説しています。
3. 商品名を知らない人が使う言葉を集める
キーワードリサーチの段階です。ここで集めるべきは、自社の商品名やブランド名ではなく、その商品を知らない人が検索に使う言葉です。
醤油を売るなら「醤油 種類 違い」「刺身 醤油 おすすめ」、器を売るなら「マグカップ 手入れ」「陶器 電子レンジ」といった言葉になります。すでに商品名で検索してくる人は放っておいても来るので、そこに記事を書いても新規は増えません。
調べ方の基本はECサイトのSEO対策とは?自力で集客・売り上げを伸ばす【初心者ガイド】にまとめています。
4. 記事を書く:文字数より「検索した人の疑問に答えきったか」で判断する
記事の良し悪しは文字数では決まりません。判断基準は、その言葉で検索した人が、記事を読み終えたときに他のページを見に行かずに済むかです。
また、更新頻度を上げること自体が目的化すると、中身の薄い記事が積み上がります。数を追うより、1本ずつ答えきることを優先してください。記事の作り方の詳細はEC(ネットショップ)の集客にはコンテンツSEOが効くで解説しています。
5. 記事から商品ページへの導線を置く:ここを忘れると読まれるだけで終わる
最後に、記事から商品ページへの動線を用意します。ここが抜けていると、アクセスは増えるのに売上が動かない状態になります。
- 記事の中で触れた商品には、その場でリンクを置く(記事末尾にまとめない)
- リンクのテキストは「こちら」ではなく商品名にする
- グローバルナビゲーションから、記事とショップを相互に行き来できるようにする
- パターン②・③でドメインが分かれている場合は、この行き来を特に丁寧に設計する
BASEのブログAppやShopifyのブログのように、記事内に商品リンクを埋め込む機能が用意されているカートもあります。まずはその標準機能を使い切るところから始めてください。
この5段階は、順番さえ守れば自社でも進められます。実際に止まりやすいのは公開後で、書き続ける手が足りなくなるケースがほとんどです。その段階になったら、記事制作だけを外部に出す方法もあります(ECNOWを運営するJPholicのEC相談窓口でも承っています)。
成果は記事数ではなく「店名・商品名での検索数」で判断する
オウンドメディアは、始めてすぐに成果が出るものではありません。検索から安定して人が来るようになるまで、早くて半年、通常は1年程度を見込んでください。
この期間、何を見て続けるかどうかを判断するかが問題になります。記事数はコントロールできる数字なので指標になりません。おすすめは、サーチコンソールで店名やブランド名での検索回数(指名検索)の推移を追うことです。
- 指名検索が増えている:記事を読んだ人が店を覚えている。方向は合っている
- 記事へのアクセスは増えたが指名検索が横ばい:読まれてはいるが店が記憶されていない。書き手や店の存在が記事から見えていない可能性がある
- どちらも動かない:キーワードの選定か、記事の答えきり方に問題がある
指名検索は、広告を止めても残る数少ない資産です。この数字が伸びていれば、まだ売上に直結していなくても続ける価値があります。
あわせて見る指標や分析の手順はECサイトの分析手順とは?注目すべき指標と役立つ3つのツール、施策全体の中での位置づけはECマーケティングの戦略と施策一覧|集客・購入・リピートの手法を体系的に解説を参照してください。
まとめ:先に決めるのはURL 次に決めるのはコンセプト
ECのオウンドメディアについて、この記事の要点を整理します。
- 設置場所は3パターン。同じドメインのサブディレクトリ(基本形)、サブドメイン、メディアをルートに置く形
- 選べるパターンはカートで決まる。Shopify・makeshop・futureshopは同一ドメイン配下に置ける。カラーミーショップは②または③、STORESはショップと別ドメインでの用意になる
- URLは最初に決めて途中で変えない。記事が増えてからの移転は評価の回復に時間がかかる
- 向く商材と向かない商材がある。選ぶのに知識が要る商品には効き、どこの店で買っても中身が同じ商品には効きにくい
- その場で売らない記事を持つ。成果を出している4社に共通するのはこの点
- 判断は指名検索の推移で行う。記事数ではなく、店が覚えられているかを見る
オウンドメディアは、広告のように出せばすぐ効くものではありません。しかし、止めた瞬間に消える広告と違って、書いた記事は残り続けます。まずは自社のカートで何が選べるかを確認し、URLを決めるところから始めてください。
集客手段全体を見渡して優先順位をつけたい場合は、ネットショップの集客方法は?アクセス数をあげるオンラインの宣伝方法7選もあわせてご覧ください。
ここまで読んで「うちの場合はどうすべきか」が残ったなら、
その一点だけでもお答えします。
ECNOWを運営するJPholicは、30社を超えるECコンサルティング実績と自社EC運営の経験があります。相談だけ・見積りだけのご利用も歓迎です。
