ECマーケティングとは、ECを通じて商品やサービスが売れる仕組みを作ることです。
この記事では、ECマーケティングの手法や運営戦略の基礎知識をまとめてご紹介します。初めてEC担当者になった方や、これからECマーケティングに取り組む方は、この記事を読んでECサイトマーケティングの全体像を捉えましょう。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
ECNOWはJPholic株式会社が運営する、
ネットショップ情報メディアです。
30社を超えるECコンサルティング実績や自社ECの運営経験をもとに、
「これからECをはじめる」「ECをいまよりもっと活用したい」という声にお応えします。
ECマーケティングとは
ECマーケティングとは、インターネットを介して商品を販売し、顧客に価値を提供するためのさまざまな活動を指します。
頭に「EC」がつかない、広義の「マーケティング」は、商品・サービスを適切なターゲットに届けるために行う事業活動全般のことです。その定義は広く「売れる仕組み」を作るためのすべての活動がマーケティングであるといえます。
一方、ECマーケティングはさまざまなマーケティング手法のなかの、ECに特化した活動を指しています。ECサイト運営を成功に導くためには、インターネット上での集客から、購入を後押しする戦略、再度利用してもらう仕組み作りなど、ECの特性に合ったマーケティング施策が必要です。
わかりやすくいうと、ECマーケティングは、ECサイトやそこで取り扱う商品をより多くの人に提供するための戦略や手法であるといえます。
ECマーケティングの戦略と手法
では、ECマーケティングに取り組む際には、何からはじめればよいのでしょうか。
ECマーケティングにはさまざまな手法があるため、やみくもに活動していては思ったような成果を得られません。実際に施策をはじめる前に、以下のポイントをおさえておきましょう。
マーケティングの前にECサイトの戦略設計を
ECマーケティングに取り組むうえで重要なのは、事前にECサイトの戦略を明確に設計することです。
戦略がないまま、見よう見まねで「他社がやっている手法」「流行の手法」「最新の手法」に手を出しても、思い通りの成果は得られません。また、運よく成功した場合も、事前の戦略なく行った活動は再現性が低く、次回以降に活かしにくい結果になります。
具体的な施策を実施する前に、自社の強みと市場のニーズを分析し「誰に」「なにを」「どうやって」売るか戦略を立てることが大切です。
手法は「集客・購入・リピート」の3軸で
ECサイトの戦略を設計したあとは、戦略を実現するための具体的な手法を検討しましょう。ECマーケティングの手法を目的別に分類すると、大きく3つに分けられます。
- 集客:お客様をECサイトに呼び込むための施策
- 購入:ECサイトを訪れたお客様に商品を購入してもらうための施策
- リピート:購入したことのあるお客様の再訪や再購入を後押しする施策
ECマーケティングを実践する際は、上記のような狙いや目的に応じて施策を組み立てることが重要です。以下の項目からは、3つの軸それぞれの具体的なマーケティング手法を紹介します。
「集客」のためのマーケティング手法
はじめに紹介するのは「集客」のためのマーケティング手法です。
集客を目的としたマーケティングは「ターゲットにサイトの存在や商品の魅力を知ってもらうこと」が大きなミッションになります。ターゲットとなり得る人に適切に情報を届けたうえで「クリックして商品を見てみよう」という気持ちを起こさせることがポイントです。
リスティング広告(PPC)
リスティング広告(検索連動型広告)とは、ユーザーが検索したキーワードに合った広告が検索結果画面に表示されるものです(クリックしたぶんだけ費用が発生する課金方式からPay Per Click / PPC広告とも呼ばれます)。リスティング広告は、ユーザーが求める情報に合わせて表示されるため、すでにニーズがあるユーザー(=顕在層、顕在顧客とも呼びます。)に効率的に情報を届けられることが特長です。
たとえば、Google検索で「めがね」と検索すると、検索結果の上部には、めがねを販売するオンラインショップのリスティング広告が表示されます。広告は文字で表示されるのが一般的ですが、近年では、ユーザーがすぐに商品ページへアクセスできるような広告表現も登場しています。
これは「Googleショッピング」に登録された商品が、検索結果画面に写真とともに掲載される機能です。Googleショッピング広告は検索連動型広告の新たな手法として注目を集めています。
ディスプレイ広告(バナー広告)
ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリの広告枠に配信される広告のことです。画像で表現される場合が多いことから、バナー広告と呼ばれることもあります。
ディスプレイ広告の多くは「アドネットワーク」といわれる複数の広告枠をまとめた広告網を介して配信されています。代表的なアドネットワークには「Googleディスプレイネットワーク(GDN)」「Yahoo!ディスプレイ広告運用型(YDA)」があり、広告主はこれらの配信サービスを活用して広告を出すことができます。
リスティング広告との大きな違いは、ターゲティングの方法です。ディスプレイ広告は、ターゲットの属性やWebサイトの閲覧履歴、特定のトピックなどを指定して広告を配信するため、潜在的なニーズを持つ幅広い層にアプローチできます。後述する「リマーケティング広告」にも対応しています。
SNS広告(LINE・Instagram・X・Facebook)
SNS広告とは、LINE、Instagram、X(旧Twitter)、Facebookなどに配信する広告のことです。
SNS広告の特長は、タイムラインやフィード上で一般の投稿に紛れて広告を配信できることです。近年は「いかにも広告」らしい表現はユーザーに好まれない傾向があり、コンテンツのなかで自然に広告との接触機会を設けられるのがメリットです。
またSNSでは、純広告のほかにインフルエンサーを活用して商品やサービスをPRするマーケティングも行われます。
アフィリエイト広告(成果報酬型広告)
アフィリエイト広告とは、ユーザーが広告をクリックし、あらかじめ設定した成果(ECサイトの場合、商品購入や会員登録など)を達成したときに費用が発生する広告手法です。
具体的には、アフィリエイト広告に登録しているブロガーやインフルエンサー(アフィリエイター)が自身のブログ・SNSで商品を紹介し、ユーザーがバナーやリンクをクリックしたり、商品を購入したりした場合に広告費用が発生します。
アフィリエイト広告は、アフィリエイターの「生の声」で商品をおすすめするため、ユーザーの共感が生まれやすいことが特長です。商品を実際に使用した感想などとともに広告を配信することで効果が高まるため、消費者にとって身近な商材の訴求に適しています。
アフィリエイト広告は、もしもアフィリエイトやa8.netなどのアフィリエイトサービスを提供するASPを通して、出稿することができます。
詳しくは、「ネットショップにおけるアフィリエイトの活用方法!掲載費用や導入方法を解説」にて解説しています。
SEO・コンテンツSEO
SEOとは、検索結果ページ(SERP)で上位に表示されるためにWebサイトやECサイトを改善することです。
一般的に、ユーザーはほしい商品があると検索から検討をスタートします。そのため、検索サイトで上位表示されることは、サイトへ流入するユーザーの増加につながります。
ECマーケティングにおけるSEOは「商品情報の充実」や「サイト構造の最適化」などを行い、検索エンジンに理解されやすいECサイトを構築するのが基本です。
また、ユーザーニーズを捉えた検索キーワードを含むコンテンツを制作する「コンテンツSEO」も効果的です。
「購入」のためのマーケティング手法
次に紹介するのはECサイト上での「購入」を後押しするマーケティング手法です。
購入を促すマーケティング施策は、すでにECサイトを訪れているユーザーに「買って帰ってもらう」ための接客手法といえます。
ランディングページ最適化(LPO)
ランディングページとは、広告や自然検索から流入したユーザーが最初に訪れるページのことです。
ランディングページ最適化(Landing Page Optimization / LPO)は、ランディングページのコンバージョン率(CVR)を高めるために、サイトを改善する施策を指します。具体的には、キャッチコピー、CVボタンのデザインや文言、コンテンツの順番、写真や動画の変更などで、もっとも効果的な表現を検討します。
【ECサイトの代表的なLP活用法】
ECでは、リスティング広告などで興味を持ったユーザーの着地先としてLPを制作する手法がよく使われています。広告とは関係のない商品もあるオンラインショップとは別に、特定商品に特化したLPを用意することで、離脱を防ぎ、購入を促進します。
サイト内検索の充実
サイト内検索は、ECサイト内でユーザーが商品を探すために使う検索機能です。
ユーザーが求めている商品にスムーズにたどり着けることは、離脱を防ぎ、購入を後押しするために重要です。具体的には、検索窓の位置、検索結果の表示順、絞り込み機能、関連キーワードの提示などを通して、サイト内検索機能がより使いやすくなるよう工夫します。
サイト内でよく調べられている商品を把握しておき、「よく調べられている商品(キーワード)」として検索窓の下に並べておくことも効果的です。
レコメンド機能
ECサイトのレコメンド機能とは、ユーザーの嗜好に合った商品をおすすめする機能です。関連性の高い商品を提示することで、検討を深めたり、購入意欲を刺激したりするのに役立ちます。
レコメンド機能は、ECサイト構築システムにもともと備わっているのが一般的です。レコメンドの条件設定にもいくつか種類があります。たとえば、店側が決めたルールに沿っておすすめする仕組みや、購入・閲覧履歴からユーザーの興味を分析しておすすめする仕組み、デザインや色などの特徴をもとに似た商品をおすすめする仕組みなどがあります。
「カゴ落ち」対策
カゴ落ちとは、ECサイトでユーザーが商品をカートに入れたものの、購入に至らず離脱してしまうことです。カゴ落ち対策とは、このような行為を減少するための施策を指します。
具体的には「購入までの手順を簡単にする」「送料や支払い方法などの情報を明確にする」「クーポンやキャンペーンなどで購入を後押しする」「リマインドメールで再検討を促す」などの方法があります。
UI(ユーザーインターフェース)の見直し
UI(ユーザーインターフェース)とは、ECサイトを利用するユーザーとECサイトの接点のことです。たとえば、ECサイト全体のデザインや商品詳細ページのレイアウト、購入ボタンの配置、購入までのステップなど、すべてがUIといえます。
UIの改善方法には、デザイン・色・フォントなどの視覚的な要素の見直しや、ユーザー行動を意識した操作性の向上などがあります。ユーザーに実際にサービスを使用してもらい、利用者目線の改善点を抽出する「ユーザビリティテスト」も有効です。
ユーザーにとって「使いやすい」ECサイトは、購入に至る導線をスムーズにするだけでなく、サイト全体の印象を高め、リピート利用の促進にもつながります。
「リピート」のためのマーケティング手法
最後に紹介するのはECサイト上での「リピート」を後押しするマーケティング手法です。
リピート対策は、ECサイトに訪れたことのある方や、購入したことがある方に対し、サイトの再訪や再購入を促します。
クーポンの発行・会員ポイントの付与
クーポンや会員ポイントの付与は、ECサイトを利用する際のインセンティブを提示することで、リピート率を高める施策です。
クーポンは、購入価格の割引に適用される場合が多く「会員登録後」「商品購入直後」のタイミングや、販促情報を配信するメールマガジンで提供するのが一般的です。クーポンの割引率をユーザーがメリットを感じる値に設定したり、ポイントの利用期限を設けたりすることで購買意欲を刺激します。
リマーケティング広告
リマーケティング広告は、ECサイトを訪れたことがあるユーザーに対し、閲覧していた商品や関連性の高い商品の広告を配信する手法です。
ECサイトで商品を閲覧していても、さまざまな理由で「その時は購入に至らない」という状況はよくあることです。このような行動をとるユーザーに対し、リマーケティング広告でリマインドすることで、再び興味を持ってもらい、ECサイトへ誘導します。
ただし、リマーケティング広告がユーザーを追跡する仕組みには、サードパーティクッキーと呼ばれるユーザー情報が利用されています。個人情報保護の観点から、サードパーティクッキーの利用は段階的に廃止される予定であり、将来的にはリターゲティング広告に依存しないリピート対策を検討する必要があります。
メールマガジンの配信
メールマガジンは、ECサイトの会員や購入者に定期的にメールを送ることで、リピート率を高める手法です。
ECが普及した当初から行われてきたマーケティング施策であり、ユーザーはたくさんのメールマガジンを受け取っている可能性があります。数あるメールマガジンに埋もれてしまわないためにも、メールマガジンの内容は「有益な情報」であることが重要です。ユーザーの興味・関心にマッチするテーマを設定したうえで、配信頻度や配信タイミングなどを検討し、もっとも効果の高い配信方法を検証しましょう。
初心者でもECマーケティングを成功させるポイント
この記事の読者の方には、初めてECマーケティングに取り組む方もいるかと思います。ECマーケティングを成功に導くために、はじめに理解しておきたいポイントを紹介します。
着手する施策の優先順位を決める
上記で紹介したように、ECマーケティングの手法は数多くあり、「あれもこれも」と手を出すと実行するだけで手一杯になってしまうことが懸念されます。
そのため、ECマーケティングに取り組む際は、はじめに売り上げを構成する要素を分解し、どこに課題があるかを特定するのが大切です。たとえば、EC立ち上げの初期段階は「集客」に課題があるのが一般的です。このような分析ができれば、優先度の高い施策は「集客」のためのマーケティング手法であることがわかります。
短期ではなく長期での成長を目標にする
ECマーケティングの施策のなかには、成果が出るまでに時間がかかるものがあります。
そのため、短期的な成果だけを追うのではなく、長期的な成長も視野に入れることが大切です。目先の利益だけを目標にしてしまうと、目に見えない進歩を正しく評価できなくなってしまいます。EC事業全体の継続的な成長を目指し、短期と長期の成長目標をバランスよく設定しましょう。
トライアンドエラーの精神が大切
ECマーケティングを実践しはじめると、打った施策が刺さらないことはよくあります。
「仮説が思ったように機能しない」「他社が成功していることが自社ではうまくいかない」など、悩むことが多くなると思いますが、ECサイトの課題はECサイトの数だけあるものです。このような試行錯誤は、すべてのECサイトが経験しています。施策を実行したあとは、検証期間を設け、根気強くPDCAを回していくことが成功のポイントです。
ECマーケティングを学ぶには
ECマーケティングの知識をさらに深めたい方に、2つの学習方法を紹介します。
書籍で学ぶ
ECマーケティングの全体像を体系的に学びたい方や、たくさんの戦略・手法をインプットしたい方には書籍を使った学習がおすすめです。ECサイトの運営法を初心者向けに解説した本から、上級者向けの戦略集までさまざまな書籍が出版されているため、目的に合ったものを活用してください。
おすすめの書籍は、ネットショップを始める前に読んでおきたいおすすめの本7選 | EC NOWを参考にしてください。
コンサルティングで学ぶ
ECマーケティングの基礎を理解したうえで、プロにアドバイスをもらいながら戦略を立てたい方は、ECサイト運営のコンサルティングサービスを活用するのがおすすめです。コンサルタントとともに優先順位を決め、施策の実行・振り返りを重ねることで、自社に合ったEC運営のノウハウが身に付きます。
JPholic株式会社は、ECサイトのコンサルティングに対応しています。
詳しいサービス内容にご興味のある方はお問い合わせください。
ECマーケティングにおすすめのツール
最後に、ECマーケティングに必要なツールを紹介します。
ECマーケティングのツールには、ECサイト構築、アクセス解析、MA(マーケティングオートメーション)、CRM(顧客管理)、Web接客、カゴ落ち対策などさまざまな種類があり、複数の機能を兼ねているものもあります。ここでは、ECサイト構築、Web接客、CRMのツールをご紹介します。
ECサイトの構築、運営、集客、顧客管理、分析を一元的に管理できるシステムです。
「特定の行動をしたユーザーにクーポンを発行する」など、顧客の行動を分析し、Web上での接客を支援するツールです。
ECサイトに特化した顧客管理ツールです。顧客の行動を分析し、メール配信などの施策実行から結果の分析まで行えます。
まとめ
この記事では、これからECサイト運営に取り組む方に向けて、ECマーケティングの基礎知識と基本的な手法を総括して紹介しました。
要点は以下の4点です。
- ECマーケティングとは、ECを通して「売れる仕組み」を作ること
- ECマーケティングの目的別手法は大きく3つに分けられる「集客・購入・リピート」
- 初期段階は集客対策を中心に、優先順位を決めて施策を実施
- 長期的な視点で目標を設定することが大切
JPholic株式会社では、EC運営に課題を感じているお客様のECマーケティングをサポートしています。各社の状況に応じて、最適な戦略・手法をご提案いたしますので、ぜひご相談ください。