ECサイトの売上が伸び悩んでいるとき、多くの担当者がまず疑うのは「施策の量」や「手法の選択」です。しかし実際のところ、施策が機能しない根本原因の多くは「戦略の設計が先行していないこと」にあります。
この記事では、ECマーケティングの全体構造を整理したうえで、集客・購入・リピートの3フェーズごとに有効な施策を体系的に解説します。すでにEC運営を経験している担当者が、自社の施策を見直し、次の打ち手を判断するための地図として活用してください。

ECマーケティングとは
ECマーケティングとは、インターネットを通じて商品・サービスを販売し、継続的に顧客へ価値を届けるための活動全般を指します。広義のマーケティング(「売れる仕組みづくり」)をECの文脈に特化させたものです。
EC特有の点は、顧客との接点がすべてデジタル上に記録・計測できることにあります。リアル店舗と異なり、流入元・閲覧ページ・離脱タイミング・購入頻度などのデータをもとに仮説検証のサイクルを回せるため、マーケティングの精度を継続的に高められます。
一方で「計測できる情報が多すぎて何を見ればいいかわからない」「施策を打っても効果が出ているか判断できない」という状況に陥りやすいのも事実です。だからこそ、戦略の設計と施策の優先順位づけが重要になります。
施策を始める前に:戦略設計の重要性

ECマーケティングの施策は多岐にわたります。しかし、戦略なしに流行の手法に飛びついても、再現性のある成果はほとんど得られません。
施策に着手する前に整理しておくべき問いは、「誰に」「何を」「どのように」売るか、そして今の自社のボトルネックがどのフェーズにあるかです。
売上の構成要素を分解すると、次のような式で表せます。
売上 = セッション数(訪問者数)× CVR(購入率)× 客単価 × リピート率
この式のどの数字が最も改善余地があるかを把握することが、優先すべき施策を決める出発点です。たとえばセッション数が少ないなら集客施策が先決であり、CVRが低いなら購入体験の改善が優先です。限られたリソースで成果を出すには、この優先順位の判断が最も重要です。
手法は「集客・購入・リピート」の3軸で
ECサイトの戦略を設計したあとは、戦略を実現するための具体的な手法を検討しましょう。ECマーケティングの手法を目的別に分類すると、大きく3つに分けられます。
- 集客:お客様をECサイトに呼び込むための施策
- 購入:ECサイトを訪れたお客様に商品を購入してもらうための施策
- リピート:購入したことのあるお客様の再訪や再購入を後押しする施策
ECマーケティングを実践する際は、上記のような狙いや目的に応じて施策を組み立てることが重要です。以下の項目からは、3つの軸それぞれの具体的なマーケティング手法を紹介します。
「集客」のためのマーケティング手法
はじめに紹介するのは「集客」のためのマーケティング手法です。
集客を目的としたマーケティングは「ターゲットにサイトの存在や商品の魅力を知ってもらうこと」が大きなミッションになります。ターゲットとなり得る人に適切に情報を届けたうえで「クリックして商品を見てみよう」という気持ちを起こさせることがポイントです。
リスティング広告(PPC)

リスティング広告(検索連動型広告)とは、ユーザーが検索したキーワードに合った広告が検索結果画面に表示されるものです(クリックしたぶんだけ費用が発生する課金方式からPay Per Click / PPC広告とも呼ばれます)。リスティング広告は、ユーザーが求める情報に合わせて表示されるため、すでにニーズがあるユーザー(=顕在層、顕在顧客とも呼びます。)に効率的に情報を届けられることが特長です。
たとえば、Google検索で「めがね」と検索すると、検索結果の上部には、めがねを販売するオンラインショップのリスティング広告が表示されます。広告は文字で表示されるのが一般的ですが、近年では、ユーザーがすぐに商品ページへアクセスできるような広告表現も登場しています。
これは「Googleショッピング」に登録された商品が、検索結果画面に写真とともに掲載される機能です。Googleショッピング広告は検索連動型広告の新たな手法として注目を集めています。
ディスプレイ広告(バナー広告)

ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリの広告枠に配信される広告のことです。画像で表現される場合が多いことから、バナー広告と呼ばれることもあります。
ディスプレイ広告の多くは「アドネットワーク」といわれる複数の広告枠をまとめた広告網を介して配信されています。代表的なアドネットワークには「Googleディスプレイネットワーク(GDN)」「Yahoo!ディスプレイ広告運用型(YDA)」があり、広告主はこれらの配信サービスを活用して広告を出すことができます。
リスティング広告との大きな違いは、ターゲティングの方法です。ディスプレイ広告は、ターゲットの属性やWebサイトの閲覧履歴、特定のトピックなどを指定して広告を配信するため、潜在的なニーズを持つ幅広い層にアプローチできます。後述する「リマーケティング広告」にも対応しています。
SNS広告(LINE・Instagram・X・Facebook)

SNS広告とは、LINE、Instagram、X(旧Twitter)、Facebookなどに配信する広告のことです。
SNS広告の特長は、タイムラインやフィード上で一般の投稿に紛れて広告を配信できることです。近年は「いかにも広告」らしい表現はユーザーに好まれない傾向があり、コンテンツのなかで自然に広告との接触機会を設けられるのがメリットです。
またSNSでは、純広告のほかにインフルエンサーを活用して商品やサービスをPRするマーケティングも行われます。
アフィリエイト広告(成果報酬型広告)

アフィリエイト広告とは、ユーザーが広告をクリックし、あらかじめ設定した成果(ECサイトの場合、商品購入や会員登録など)を達成したときに費用が発生する広告手法です。
具体的には、アフィリエイト広告に登録しているブロガーやインフルエンサー(アフィリエイター)が自身のブログ・SNSで商品を紹介し、ユーザーがバナーやリンクをクリックしたり、商品を購入したりした場合に広告費用が発生します。
アフィリエイト広告は、アフィリエイターの「生の声」で商品をおすすめするため、ユーザーの共感が生まれやすいことが特長です。商品を実際に使用した感想などとともに広告を配信することで効果が高まるため、消費者にとって身近な商材の訴求に適しています。
アフィリエイト広告は、もしもアフィリエイトやa8.netなどのアフィリエイトサービスを提供するASPを通して、出稿することができます。
詳しくは、「ネットショップにおけるアフィリエイトの活用方法!掲載費用や導入方法を解説」にて解説しています。

SEO・コンテンツSEO

SEOとは、検索結果ページ(SERP)で上位に表示されるためにWebサイトやECサイトを改善することです。
一般的に、ユーザーはほしい商品があると検索から検討をスタートします。そのため、検索サイトで上位表示されることは、サイトへ流入するユーザーの増加につながります。
ECマーケティングにおけるSEOは「商品情報の充実」や「サイト構造の最適化」などを行い、検索エンジンに理解されやすいECサイトを構築するのが基本です。
また、ユーザーニーズを捉えた検索キーワードを含むコンテンツを制作する「コンテンツSEO」も効果的です。
「購入」のためのマーケティング手法
次に紹介するのはECサイト上での「購入」を後押しするマーケティング手法です。
購入を促すマーケティング施策は、すでにECサイトを訪れているユーザーに「買って帰ってもらう」ための接客手法といえます。
ランディングページ最適化(LPO)
ランディングページとは、広告や自然検索から流入したユーザーが最初に訪れるページのことです。
ランディングページ最適化(Landing Page Optimization / LPO)は、ランディングページのコンバージョン率(CVR)を高めるために、サイトを改善する施策を指します。具体的には、キャッチコピー、CVボタンのデザインや文言、コンテンツの順番、写真や動画の変更などで、もっとも効果的な表現を検討します。
【ECサイトの代表的なLP活用法】
ECでは、リスティング広告などで興味を持ったユーザーの着地先としてLPを制作する手法がよく使われています。広告とは関係のない商品もあるオンラインショップとは別に、特定商品に特化したLPを用意することで、離脱を防ぎ、購入を促進します。
サイト内検索の充実
サイト内検索は、ECサイト内でユーザーが商品を探すために使う検索機能です。
ユーザーが求めている商品にスムーズにたどり着けることは、離脱を防ぎ、購入を後押しするために重要です。具体的には、検索窓の位置、検索結果の表示順、絞り込み機能、関連キーワードの提示などを通して、サイト内検索機能がより使いやすくなるよう工夫します。
サイト内でよく調べられている商品を把握しておき、「よく調べられている商品(キーワード)」として検索窓の下に並べておくことも効果的です。
レコメンド機能
ECサイトのレコメンド機能とは、ユーザーの嗜好に合った商品をおすすめする機能です。関連性の高い商品を提示することで、検討を深めたり、購入意欲を刺激したりするのに役立ちます。
レコメンド機能は、ECサイト構築システムにもともと備わっているのが一般的です。レコメンドの条件設定にもいくつか種類があります。たとえば、店側が決めたルールに沿っておすすめする仕組みや、購入・閲覧履歴からユーザーの興味を分析しておすすめする仕組み、デザインや色などの特徴をもとに似た商品をおすすめする仕組みなどがあります。
「カゴ落ち」対策
カゴ落ちとは、ECサイトでユーザーが商品をカートに入れたものの、購入に至らず離脱してしまうことです。カゴ落ち対策とは、このような行為を減少するための施策を指します。
具体的には「購入までの手順を簡単にする」「送料や支払い方法などの情報を明確にする」「クーポンやキャンペーンなどで購入を後押しする」「リマインドメールで再検討を促す」などの方法があります。
UI(ユーザーインターフェース)の見直し
UI(ユーザーインターフェース)とは、ECサイトを利用するユーザーとECサイトの接点のことです。たとえば、ECサイト全体のデザインや商品詳細ページのレイアウト、購入ボタンの配置、購入までのステップなど、すべてがUIといえます。
UIの改善方法には、デザイン・色・フォントなどの視覚的な要素の見直しや、ユーザー行動を意識した操作性の向上などがあります。ユーザーに実際にサービスを使用してもらい、利用者目線の改善点を抽出する「ユーザビリティテスト」も有効です。
ユーザーにとって「使いやすい」ECサイトは、購入に至る導線をスムーズにするだけでなく、サイト全体の印象を高め、リピート利用の促進にもつながります。
「リピート」のためのマーケティング手法
最後に紹介するのはECサイト上での「リピート」を後押しするマーケティング手法です。
リピート対策は、ECサイトに訪れたことのある方や、購入したことがある方に対し、サイトの再訪や再購入を促します。
クーポンの発行・会員ポイントの付与
クーポンや会員ポイントの付与は、ECサイトを利用する際のインセンティブを提示することで、リピート率を高める施策です。
クーポンは、購入価格の割引に適用される場合が多く「会員登録後」「商品購入直後」のタイミングや、販促情報を配信するメールマガジンで提供するのが一般的です。クーポンの割引率をユーザーがメリットを感じる値に設定したり、ポイントの利用期限を設けたりすることで購買意欲を刺激します。
リマーケティング広告
リマーケティング広告は、ECサイトを訪れたことがあるユーザーに対し、閲覧していた商品や関連性の高い商品の広告を配信する手法です。
ECサイトで商品を閲覧していても、さまざまな理由で「その時は購入に至らない」という状況はよくあることです。このような行動をとるユーザーに対し、リマーケティング広告でリマインドすることで、再び興味を持ってもらい、ECサイトへ誘導します。
ただし、リマーケティング広告がユーザーを追跡する仕組みには、サードパーティクッキーと呼ばれるユーザー情報が利用されています。個人情報保護の観点から、サードパーティクッキーの利用は段階的に廃止される予定であり、将来的にはリターゲティング広告に依存しないリピート対策を検討する必要があります。
メールマガジンの配信
メールマガジンは、ECサイトの会員や購入者に定期的にメールを送ることで、リピート率を高める手法です。
ECが普及した当初から行われてきたマーケティング施策であり、ユーザーはたくさんのメールマガジンを受け取っている可能性があります。数あるメールマガジンに埋もれてしまわないためにも、メールマガジンの内容は「有益な情報」であることが重要です。ユーザーの興味・関心にマッチするテーマを設定したうえで、配信頻度や配信タイミングなどを検討し、もっとも効果の高い配信方法を検証しましょう。
初心者でもECマーケティングを成功させるポイント
この記事の読者の方には、初めてECマーケティングに取り組む方もいるかと思います。ECマーケティングを成功に導くために、はじめに理解しておきたいポイントを紹介します。
着手する施策の優先順位を決める
上記で紹介したように、ECマーケティングの手法は数多くあり、「あれもこれも」と手を出すと実行するだけで手一杯になってしまうことが懸念されます。
そのため、ECマーケティングに取り組む際は、はじめに売り上げを構成する要素を分解し、どこに課題があるかを特定するのが大切です。たとえば、EC立ち上げの初期段階は「集客」に課題があるのが一般的です。このような分析ができれば、優先度の高い施策は「集客」のためのマーケティング手法であることがわかります。
短期ではなく長期での成長を目標にする
ECマーケティングの施策のなかには、成果が出るまでに時間がかかるものがあります。
そのため、短期的な成果だけを追うのではなく、長期的な成長も視野に入れることが大切です。目先の利益だけを目標にしてしまうと、目に見えない進歩を正しく評価できなくなってしまいます。EC事業全体の継続的な成長を目指し、短期と長期の成長目標をバランスよく設定しましょう。
トライアンドエラーの精神が大切
ECマーケティングを実践しはじめると、打った施策が刺さらないことはよくあります。
「仮説が思ったように機能しない」「他社が成功していることが自社ではうまくいかない」など、悩むことが多くなると思いますが、ECサイトの課題はECサイトの数だけあるものです。このような試行錯誤は、すべてのECサイトが経験しています。施策を実行したあとは、検証期間を設け、根気強くPDCAを回していくことが成功のポイントです。
ECマーケティングを学ぶには
ECマーケティングの知識をさらに深めたい方に、2つの学習方法を紹介します。
書籍で学ぶ
ECマーケティングの全体像を体系的に学びたい方や、たくさんの戦略・手法をインプットしたい方には書籍を使った学習がおすすめです。ECサイトの運営法を初心者向けに解説した本から、上級者向けの戦略集までさまざまな書籍が出版されているため、目的に合ったものを活用してください。
おすすめの書籍は、ネットショップを始める前に読んでおきたいおすすめの本7選 | EC NOWを参考にしてください。

コンサルティングで学ぶ
ECマーケティングの基礎を理解したうえで、プロにアドバイスをもらいながら戦略を立てたい方は、ECサイト運営のコンサルティングサービスを活用するのがおすすめです。コンサルタントとともに優先順位を決め、施策の実行・振り返りを重ねることで、自社に合ったEC運営のノウハウが身に付きます。
JPholic株式会社は、ECサイトのコンサルティングに対応しています。
詳しいサービス内容にご興味のある方はお問い合わせください。
ECマーケティングにおすすめのツール
ECマーケティングで活用できる主要ツール
| カテゴリ | ツール名 | 特徴 |
|---|---|---|
| EC構築・管理 | makeshop | 構築・集客・顧客管理・分析を一元管理 |
| Web接客 | KARTE | 顧客行動を分析しリアルタイムで接客自動化 |
| EC特化CRM | うちでのこづち | EC向け顧客分析とメール施策の実行・効果測定 |
| アクセス解析 | Google Analytics 4 | 流入・行動・コンバージョンの統合分析 |
| ヒートマップ | Mouseflow / Hotjar | ページ内のユーザー行動を可視化 |
ツールはあくまで施策を実行・検証するための手段です。導入前に「何の課題を解決するために使うか」を明確にしてから選定することが、使いこなせるかどうかを分けます。
まとめ
ECマーケティングは「集客→購入→リピート」の3フェーズを軸に、自社のボトルネックを特定しながら施策を積み上げていくものです。手法の数は豊富ですが、戦略的な優先順位なしに全方位で動いても成果は出にくく、リソースを消耗するだけになります。
まず売上の方程式(セッション数×CVR×客単価×リピート率)のどこを改善すべきかを分析し、そこから逆算して施策を選ぶ。この基本的な思考の流れを徹底することが、ECマーケティングで継続的な成果を出す土台になります。


