昨今、サブスクリプション市場は急速に成長しており、国内消費額が1兆円へと迫っています。成長期の市場に目をつけ、サブスクリプション型ネットショップへの取り組みを検討する事業者様も多いはず。
しかし、具体的にどのような手順で事業を開始すればよいのかとまどう事業者様も多いはず。そこで、本記事ではサブスクリプション(定期購入)型ネットショップのはじめ方を、6つのステップに分けて紹介します。
編集者
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サブスクリプション(定期購入)型ネットショップにおける2種類のビジネスモデル
サブスクリプション型ネットショップとは、ユーザーからの定期的な支払いに対して、継続的に商品を提供するサービス形態のこと。毎月季節の食材をお届けするサービスや、冷蔵庫のドリンク残量を検知して、必要なタイミングでドリンクを補充するサービスなど、さまざまなサブスクリプションビジネスが存在します。
サブスクリプション(定期購入)型ネットショップを大きく分類すると、下記2種類のビジネスモデルに集約されます。
- キュレーション型
- 補充型
この章では、上記2つのビジネスモデルの特徴と違いを紹介します。
キュレーション型
キュレーション型とは、ショップ側がセレクトした商品を提供するビジネスモデルのこと。ユーザーにあらかじめ商品内容を知らせておくサービスもあれば、届くまで中身がわからない福袋のようなサービスもあります。
キュレーション型では、各商品ジャンルのプロがユーザーの趣向に合わせた商品をセレクトするケースが一般的。たとえば、プロのスタイリストが厳選した洋服が届くサービスや、ソムリエが厳選したワインが届くサービスなどです。
これらのサービスを利用したユーザーは、その道のプロフェッショナルがセレクトした、自分だけの商品を享受できるのです。また、事前に商品の中身を知らされないサービスでは、「なにが届くのかワクワクする」購入体験が得られます。
キュレーション型は現状、美容・アパレル・食品などの一部の業界で普及しているビジネスモデルですが、適用先が広い上に付加価値のポテンシャルが高いため、今後は他業界への拡大が予測されます。
補充型
補充型は、特定の商品を継続的に提供するビジネスモデルのこと。普段の生活で消費する洗剤や歯磨き粉などの日用品に適しています。
補充型では、ユーザーが商品を買い忘れる心配がない上に、商品が自宅に届くため、買い物の手間を省ける点が魅力です。また、割引価格での提供が一般的なため、通常時よりもお得に商品を得られます。
先ほど紹介した、ドリンクの減りを検知して補充をおこなうサービスは、補充型の代表例。利用するユーザーは「ドリンクを購入するのではなく、いつでも喉を潤せるというサービス」に価値を見出します。
そのためユーザーがサービス内容に満足している場合、ショップの運営側は、継続的な売上を期待でき、なおかつ消費データなどを収集できるためコスト削減やサービス改善に活用できます。
サブスクリプション市場は急速に拡大している
冒頭でも紹介したとおり、国内のサブスクリプション市場は急速に成長しています。以前の市場では、デジタルコンテンツ・食品・化粧品などの特定分野のみに偏っており、そのほかの分野では市場の伸び悩みが懸念されていました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、生活様式・市場ニーズが一変。これまでサブスクリプションサービスを利用してこなかった、新規ユーザーの利用率が高まったのです。これにより、昨今のサブスクリプション市場は成長期に突入しており、今後もさらなる成長が予測されます。
具体的な数値を見ると、2019年度は6,828億2,900万円だったサブスクリプションの国内消費が、2020年度には8,759億6,000万円に増加。前年度比で28.3%上昇しています。
コロナ禍において行動が制限されたことで、利便性の高いサブスクリプションサービスの利用が進んだことが主な要因と考えられます。また今後も国内消費が増加すると予測されており、2022年には消費金額1兆円を超える見通しです。
サブスクリプション(定期購入)型ネットショップの始め方
サブスクリプション(定期購入)型ネットショップをはじめるにあたり、どのような手順で進めばよいのでしょうか。この章では、サブスクリプション型ネットショップのはじめ方を、下記6つのステップに分類して解説します。
- ステップ1.ショップのコンセプトを決める
- ステップ2.ネットショップを開設する
- ステップ3.提供する商品の構成を決める
- ステップ4.商品力を高めるブランディングとパッケージを考える
- ステップ5.注文が入ってから発送までの流れを把握する
- ステップ6.サブスクリプション型ネットショップを開始
ステップ1. ショップのコンセプトを決める
ネットショップを出店する前に、大枠となるコンセプトを設定しなければなりません。理由は、コンセプトの設定が、作業の円滑化やビジネス成功率向上につながる重要なポイントのため。どのようなネットショップを目指すのか、商品によりどのような価値を提供するのかなど、基本的な部分を組み立てましょう。
ただし、ショップのコンセプトを設定するには、参入する市場の把握が欠かせません。したがってコンセプト設定は、下記の手順で進めるとよいでしょう。
- 市場の調査
- ターゲットユーザーの設定
- コンセプトの設定
まずは、すでにサブスクリプション型ネットショップを運営している競合を参考に、市場の把握・調査をおこない、自社が狙うべき未開拓領域を見つけましょう。狙う市場が決まれば、ターゲットとなるユーザーの属性・購買行動・趣向などを明確にし、ペルソナを定義。その後、ネットショップのコンセプトを設定する流れです。
ステップ2. ネットショップを開設する
次に、定期購入・サブスクリプションビジネスで必要な、ネットショップを作成します。このときに気をつけなければならないのが、サブスクリプションに対応したネットショップ作成サービスを選ぶこと。サブスクリプション型ネットショップは、一般的なネットショップと求める機能が異なるためです。
たとえばサブスクリプション型ネットショップでは、下記の機能が求められます。
- デザインや機能の拡張性・カスタマイズ性
- スムーズに注文を処理できる受注管理
- 顧客情報の管理・分析機能を包括する顧客管理
- 品目増加にも耐えうるる商品管理・出荷管理
また、ユーザーに向けた機能として、定期購入機能やF2転換を促すレコメンド機能、販売促進・広告管理なども効果的です。自社で策定したビジネスモデルをもとに必要機能を洗い出し、適切なネットショップ作成サービスを選定しょう。
ステップ3. 提供する商品の構成を決める
サブスクリプション型ネットショップで提供する商品構成・提供頻度など、サービスの内容を考えていきます。キュレーション型と補充型でも大きく異なりますが、主に以下5つのポイントを決めることからはじめましょう。
- 商品を提供する頻度
- サブスクリプション・商品の価格帯
- 提供する商品の個数・内容
- 商品の仕入れ先
- 配送業者の選定
特にキュレーション型のサブスクリプション型ネットショップでは、商品構成が売上に直結します。運営側がセレクトした商品に満足しなければ、サービスの解約につながるためです。ターゲットの趣向・ニーズを十分に汲み取り、人気商品やおすすめ商品、商品のサイズ感や色味など、バラエティ豊かな商品構成に仕上げましょう。
また、ユーザーが求める商品を提供できたとしても、商品数の過不足や提供頻度が適切でない場合は顧客満足度の低下につながります。ユーザーのニーズと事業の収益性を鑑みて、提供頻度とサービス料金を設定します。
商品の内容が定まったら、仕入れ先・配送業者の選定へ移行します。実際の商品を確認するために、サンプルを注文して商品の品質や特徴を把握。イメージしていたものとのギャップを減らしましょう。
配送先は、料金だけでなく配送能力も見ておくことが大切。仮に料金が安い場合でも、配送が集中するクリスマス・年末などに遅れが生じては、ユーザー満足度の低下につながるためです。
ステップ4. 商品力を高めるブランディングとパッケージを考える
サブスクリプション型ネットショップのブランディングでは、商品のみならず、広告やパッケージの外観も同じくらい重要です。新規顧客を獲得しブランドの信用を高めるには、ユーザーの記憶に残りやすい印象づけが必要です。ロゴの作成や独創性の高いパッケージの作成など、強固なブランドを確立するための基本をクリアしましょう。
また、サブスクリプション型ネットショップに欠かせないのが、開封体験。開封体験は顧客満足にもつながる重要要素であり、サブスクリプションの継続率を大きく左右します。
もしユーザーにとって感動的な開封体験を提供できれば、サービスを継続する可能性も高まります。感動的な体験は、だれかに共有したくなるもの。
ユーザーが思わずシェアしたくなるような開封体験は、SNSなどを通じて拡散されマーケティング効果が期待できます。ターゲットユーザーの感受性を刺激する開封体験を目指しましょう。
ステップ5. 注文が入ってから発送までの流れを把握する
サブスクリプション型ネットショップを開始する前に、一連のオペレーションをテストすることが重要です。もしかすると、いくつかのプロセスに問題があるかもしれないためです。
実際にネットショップへの会員登録から配送までをテスト。そのほか、サービスの解約・問い合わせ・返品などのカスタマーサポートも調査します。
問題点があれば改善を図り、ユーザーファーストなネットショップを目指しましょう。
ステップ6. サブスクリプション型ネットショップを開始
サブスクリプション型ネットショップを開始したあとは、ユーザーのフィードバックをもとにサービス改善を繰り返します。商品発送後に、良かった点と改善すべき点などのアンケートを実施しましょう。
フィードバックを継続的に得ることで、ユーザーにとってこれ以上ないほど魅力的な商品へ改善でき、マネタイズの強化につながります。
また、収集したデータをもとに、サービス面の強化も可能。ライブチャットによるサポートやおすすめ商品のレコメンドなど、ユーザーへリアルタイムで情報を提供する仕組みが構築できます。
顧客との会話からニーズを汲み取り、サブスクリプション型ネットショップの最適化をおこないましょう。
サブスクリプション型ネットショップのメリット・デメリット
サブスクリプション型ネットショップにはメリットのみならず、デメリットも存在します今後ネットショップを出店する場合には、メリット・デメリットの双方を十分理解しておくことが大切です。
サブスクリプション型ネットショップ4つのメリット
サブスクリプション型ネットショップのメリットは、次の4つがあげられます。
- 安定した収益が確保できる
- ・新規利用のハードルを下げられる
- ・ユーザーデータが蓄積されやすい
- ・顧客ロイヤルティが高い
サブスクリプション型ネットショップにおける最大のメリットは、安定した収益の確保です。サブスクリプションでは、サービスが定着してくるとユーザーの解約率が低下します。また、定額制を採用するケースが多く、「ユーザー数×料金」が売上となるため、ユーザー数を増加できれば、さらなる売上向上が期待できます。
ふた2つ目のメリットは、新規利用時のハードルを下げられること。料金体系が把握しやすいことで、サービス利用を検討する方の心理的負担を軽減できます。これによりサービス利用へのハードルが下がり、成約率向上につながります。
みっつ3つ目のメリットは、ユーザーデータをが蓄積しやすいこと。サブスクリプション型ネットショップでは、サービスを解約されない限り、顧客との関係が続きます。これにより、ユーザーの趣味・趣向や購買データの蓄積が可能となり、データ分析を通してサービスの改善やマーケティングに活用できます。
よっ4つ目のメリットは、顧客ロイヤルティが高いこと。定期的に商品を提供することで、サービスがユーザーの生活の一部となり、解約率低下が期待できます。また、提供される商品よりもサービスに価値を見出すため、サービスが存続する限り顧客ロイヤルティが持続しやすいのです。
サブスクリプション型ネットショップ3つのデメリット
一方、サブスクリプション型ネットショップには、下記3つのデメリットが存在します。
- ・長期的に顧客ニーズを満たし続けなければならない
- ・サービス改善へのコストがかかる
- ・集客難易度が高い
ひとつ目のデメリットは、長期的に顧客ニーズを満たし続けなければならないこと。サブスクリプション型ネットショップは、常に利用者のニーズを捉えたサービスを提供しなければ、顧客満足度の低下を引き起こし、解約につながりかねません。
したがって、常に興味を持ってもらえるような、新鮮な商品・サービスを用意しなければならず、市場調査・サービス改善などの作業工数増加が懸念されます。
ふたつ目のデメリットは、度重なるサービス改善にコストがかかること。サブスクリプション型ネットショップは、ユーザーの満足度を維持するためにも、提供商品の改善やユーザー研究が常に必要です。サービス改善には継続的なコストがかかるため、ショップの収益性を圧迫する恐れがあります。
みっつ目のデメリットは、集客難易度が高いこと。サブスクリプション市場は成長しているものの、競合の増加に伴う競争率の激化が予測されます。競合他社よりもリードするためには、ほかのサービスとは異なる付加価値を提供し、なおかつ集客面の強化が大きなポイントです。
サブスクリプションに対応するネットショップ作成サービス3選
サブスクリプションに対応する、おすすめのネットショップ作成サービスは下記の3つ。
- Make Shop
- サブスクストア
- Shopify
各サービスの特徴とおすすめポイントを紹介します。
Make Shop
「MakeShop」は、業界でNo.1の機能数を誇るネットショップ作成サービス。サブスクリプション・定期購入に対応した豊富な機能が提供されています。たとえば、配送頻度に応じて価格を変更できる機能や、ユーザー単位で割引額やポイント付与の変更が可能。
標準機能に加え、有料の拡張機能も提供されているため、ネットショップの規模拡大にも対応できます。また、15日間の無料お試し期間が付いているのも魅力。実際に利用しないとわからない使い勝手・機能の深度を体感でき、サービス選びの判断材料にできます。
サブスクストア
「サブスクストア」はサブスクリプション特化型ネットショップで、業界No.1シェアを誇るサービス。もともと「たまごリピートNext」というサービスを提供しており、ネットショップに関するノウハウや機能が充実しています。
業界特化型のサービスなため、サブスクリプション型ネットショップに必要な機能を網羅しています。また、管理画面はだれでも操作できるようシンプルな設計。直感的に使えるため、初めてネットショップを出店する方にもおすすめです。
Shopify
「Shopify(ショッピファイ)」は、世界で人気が高いネットショップ作成サービスです。世界中のパートナーが開発するアプリを活用して、機能の拡張ができます。
Shopifyのマーケティング機能の分析、レポート、マーケティングツールを活用すれば、ユーザーへの適切なアプローチ、F2転換に効果的でしょう。既に運営しているサイトにカート機能を搭載できるため、ウェブ媒体をお持ちの方にもおすすめです。
サブスクネットショップを成功させる3つのポイント
サブスクリプション型ネットショップを成功させるには、下記3つのポイントが大切です。
- ニーズをトレースして最適な商品・サービスを提供
- はじめは新規顧客獲得に尽力
- 社内リソースの最適化を図る
ひとつ目のポイントは、ニーズをトレースして最適な商品・サービスを提供すること。サブスクリプションが型ネットショップでは、ユーザーを継続的に満足させなければなりません。ただし、市場・環境の変化により、ユーザーが求める商品・サービスは移り変わります。
したがって、ユーザーのニーズをトレースし、常に商品・サービスを最適化、ユーザーが満足する提供物を目指さなければなりません。また、同様のビジネスモデルを実施する他社が存在する場合、ユーザー満足度を維持しつつ、いかにして差別化を図るのかを検討する必要があります。
ふたつ目のポイントは、初めは新規顧客の獲得に尽力すること。サブスクリプションサービスの売上は、「ユーザー数×サービスの料金」。つまり、ユーザー数が少ないうちは収益の確保が困難です。
そのため、初めは集客面にリソースを割り振り、新規顧客の獲得を優先することが大切です。たとえば、動画配信サービスなどでも取り入れられている、無料体験期間を設けるのも効果的。
サブスクリプション型ネットショップを軌道に乗せるためにも、ユーザー獲得を優先的におこないましょう。
みっつ目のポイントは、社内リソースの最適化です。サブスクリプション型ネットショップのほかにも事業を抱えている場合、社内リソースの不足が懸念されます。
そのため、まずは業務改善などをおこない、業務の効率化・リソースの削減を目指すとよいでしょう。また、社内リソースのみで業務をまかなえない場合は、部分的なアウトソーシングも効果的。
サブスクリプション型ネットショップに尽力できる環境を構築するためにも、業務の効率化・外注化をおすすめします。
サブスクリプション型ネットショップの出店を進めよう
この記事では、サブスクリプション型ネットショップのはじめ方を紹介しました。具体的な手順は、下記のとおりです。
- ステップStep1.ショップのコンセプトを決める
- ステップStep2.ネットショップを開設する
- ステップStep3.提供する商品の構成を決める
- ステップStep4.商品力を高めるブランディングとパッケージを考える
- ステップStep5.注文が入ってから発送までの流れを把握する
- ステップStep6.サブスクリプション型ネットショップを開始
また、ネットショップを出店する際には、サブスクリプションに対応したサービスを選ぶことが重要です。利用するサービスが決まっていない方は、今回紹介した3つのサービスを検討してみてください。