ネットショップでより効果的な施策を実施するには、ABテストが効果的。しかし、ただ闇雲にABテストを実施しても、想定する検証結果は得られません。
本記事では、ネットショップにおける正しいABテストのやり方と、おすすめのツールを紹介します。ネットショップの最適化を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
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ネットショップのABテストとはどんなもの?
ABテストは、ネットショップのみならずウェブ業界、広告業界でも取り入れられている施策です。この章ではABテストの概要と、ネットショップにおいてどのような効果を発揮するのかを紹介します。
ABテストとは?
ABテストとは、トップページの画像や広告のコピーなど、ネットショップにおける特定の部位を最適化するための施策。具体的には、ある一部部分のみを変更したAパターンとBパターンを用意し、どちらがより効果的かを検証するテストです。
たとえば、商品ページの画像のみを変更した2パターンを公開し、CVR(コンバージョンレート:成約率)を比較します。CVRが高かった方を採用することで、部分的ではありますが、ネットショップの最適化につながります。
こうした小さな改善を繰り返すことで、ネットショップ全体の最適化を目指す取り組みです。また、ABテストという名前がついていますが、3パターン・4パターンでテストするケースもあります。ABテストはさまざまな場所で活用でき、ネットショップのトップページや入力フォーム、広告などでも活用できます。
ABテストのメリット
ネットショップでABテストを実施するメリットは、下記の3つ。
- 低コストでネットショップを最適化できる
- 工数が少なく手軽にはじめられる
- リニューアルの方向性を確認できる
ABテストの対象範囲は狭く、また大掛かりな改修を必要としないため、低コストでネットショップを最適化できます。大規模なリニューアルは大きな改善効果が期待できますが、高額なコストがかかります。ABテストは短期間で大幅な刷新こそできないものの、コストを抑えつつCVRやアクセス数の向上が可能です。
ABテストで検証するのはネットショップ内でも特定の一部分のみ。実施に必要な工数が少ないため、普段の業務と並行しながら進められるでしょう。
また、最近では、ABテストをサポートするツールが数多く提供されています。こうしたソリューションを用いることで、手間をかけることなくテストの実施・検証が可能です。
通常ネットショップのリニューアルをする場合、多くの時間的・金銭的コストがかかります。万が一、誤った方向へリニューアルしてしまえば、費やしたコストがむだになります。
こうした事態を避けるため、事前にABテストをおこない、リニューアルの方向性を確認する方法もあります。リニューアルが失敗するリスクを抑えられる点は、ABテストの大きな魅力です。
ABテストのデメリット
一方、ABテストの実施には、下記2つの注意点が存在します。
- 仮説次第でテストの効果が左右される
- 同時に複数要素をテストできない
仮説を立てずに2つのパターンを用意するだけでは、十分なテスト効果が期待できません。ABテストの実行では、ネットショップの現状を分析し、具体的にどう改善するのかという仮説が大切です。
ネットショップを少しでも早く最適化したいとの思いから、複数の要素でABテストを実施するケースがあります。ただし、複数のABテストを並行すると、どの要素が効果を発揮しているのかを検証しづらく、誤った改善施策を進めるリスクが高まります。したがってABテストの実施は、一度に1要素の比較を徹底して段階的に進めましょう。
ネットショップにおけるABテストの正しいやり方
ネットショップにおけるABテストの正しいやり方は、下記のとおり。
- 目標を設定する
- 仮説を立てる
- ABテストを実行する
- ABテストの効果を検証する
- ABテストの効果を踏まえて改善する
本章では、具体的なやり方と各工程で押さえておくべきポイントを紹介します。
目標を設定する
まずは、ABテストの実施目標を設定します。基本的に、一回のABテストで十分な効果が出ることはなく、仮説立案・ABテスト実行・検証・改善のPDCAを繰り返し回すことがほとんどです。実行過程でPDCAの方向性を誤らないためにも、目標の設定が大切です。
目標を設定する際には、「アクセス数を向上させる・カゴ落ち率を下げる」など抽象的な目標ではなく、「アクセス数10%向上・カゴ落ち率20%減少」など、具体的な数値を用いるのがおすすめ。また、ABテストの対象範囲は狭いため、「出稿中のリスティング広告を改善してアクセス数10%向上」など、改善する要素も明確にすることが大切です。
仮説を立てる
続いてABテストのパターン作成において重要な、仮説の立案作業です。現在のネットショップをどのように改善すれば、目標を達成できるのかを検討し、仮説を立てます。
たとえば商品ページのコピーが、ユーザー属性とずれていることで、CVが伸びないなど。この仮説を受けて、ユーザーの属性分析やペルソナの再設定をおこない、ABテストに向けて複数のパターンを作成します。
仮説を立てる際には、顧客がどこを見ているのか、どのような行動を取るのかなど、顧客の目線で考えることが大切です。ヒートマップを用いて、顧客が注目する箇所を割り出すのも良いでしょう。現状の課題を明確にし、具体的な改善方法の策定を目指してください。
ABテストを実行する
策定した仮説にもとづいて、ABテストを実行します。もしかすると、ABテストの開始後にバナーやコピーなどを変更したくなるかもしれません。
ただし、テスト中は各要素の修正を控えるようにしてください。ABテストの実行中に修正を加えると、テストデータに影響をおよぼす恐れがあるためです。
ABテストに影響が出ないよう、テスト中の修正は控えるのが賢明です。また、やむを得ず修正が必要な場合は、ABテストを一旦終了し、再度テストをやり直すとよいでしょう。
ABテストの効果を検証する
ABテストが完了したら、どのパターンで最も効果があったのか、目標に対してどれだけの進捗があったのかを検証します。ただし、ABテストでは必ずしも仮説どおりの結果が出るとは限りませんし、複数のパターンに優劣がつかない恐れもあります。
この場合、仮説を見直したり、各パターンを修正したりして、PDCAを繰り返します。また、各ABテストで収集したデータは、のちの施策で活用できる可能性があるため、ノウハウとして蓄積しておくとよいでしょう。
ABテストは、小さな改善を積み重ねる地道な施策です。大幅な改善効果は期待できませんが、着実によい方向へ改善できるため、長期的な視点を持ち、ネットショップ全体の最適化を目指しましょう。
ネットショップにおけるABテストの王道パターン3選
ネットショップにおけるABテストは、どのように進めればよいのでしょうか。参考までに、ネットショップでおこなわれる主なABテストを3つ紹介します。
- トップページ・広告の画像変更
- CTAボタンの変更
- 商品ページ・広告のコピーの変更
自社ネットショップでABテストをおこなう際の参考にしてください。
トップページ・広告の画像変更
トップページ・広告の画像は、真っ先にユーザーの目に止まる要素。画像によってショップへのイメージが大きく左右されるため、ABテストで最適化する企業が多く存在します。
トップページ・広告の画像をAB分析する際には、下記2つのポイントを検証するとよいでしょう。
- 人物画像かイメージ画像か
- 商品画像の配置はどのあたりにするか
人物画像とイメージ画像ではユーザーに与える印象が大きく異なります。アクセサリーを扱うネットショップの場合、商品を身につけた人物画像を掲載すれば、ユーザーは購入後に自分が身につけた姿を連想し、CVに至るかもしれません。
一方、イメージ画像は商品の魅力を引き立て、ユーザーに商品を印象付ける効果があります。商品やネットショップのコンセプトなどによっても、どちらが適しているかは異なるため、ABテストでCVRを検証するとよいでしょう。
また、商品画像の配置・大きさによっては、ユーザーの目にとまらない恐れがあります。ユーザーの視線を可視化するヒートマップを用いて、最適な配置を割り出し、ABテストで効果を検証するのがおすすめです。
CTAボタンの変更
「カートへ入れる」や「注文確定」などのCTA(コール・トゥ・アクション:行動喚起)ボタンは、CVに近い要素のため、特に改善効果の現れやすい要素です。CTAボタンの最適化では、下記のポイントを検証するとよいでしょう。
- CTAボタンの大きさ
- CTAボタンの色
- CTAボタン内の文言
CTAボタンは、ユーザーのアクションを妨げない範囲で大きく設定することが大切です。ほかのボタンよりも大きく設定することで、目立ちやすくなおかつ押し間違えを防止できるためです。
モバイル端末向けのページでは、人差し指のサイズが適切といわれています。ユーザーの属性に合わせた複数パターンを用意して、ABテストで検証すると良いでしょう。
CTAボタンの色は、ユーザーの心理に影響をおよぼします。またどの色が適切かは、ネットショップの色使いによっても異なるため、ABテストで効果を検証するのが有効です。
CTAボタン内の文言には、次の行動が伝わりやすい内容が適しています。たとえば、購入手続きのCTAボタンに「購入する」と書かれている場合、初めて訪れたユーザーは、「購入が確定してしまうのかな」と不安に思い、離脱するかもしれません。
こうした機会損失を防ぐためにも、CTAボタンの文言をわかりやすく、なおかつ次の行動が伝わるように最適化することが大切です。
商品ページ・広告のコピー変更
商品ページ・広告のコピーは、ユーザーの購買意欲を刺激するための重要な要素。コピーを最適化することで、CVが高まるケースもあるため、ぜひとも改善したいポイントです。
ただし商品ページ・広告のコピーは、ネットショップのコンセプトや扱う商品によっても方向性が異なります。そのため、一概にどのようなコピーが良いとはいえませんが、下記のポイントを意識することが効果的です。
- ターゲット層に適している
- シンプルでわかりやすく
- ベネフィットを示す
- ユーザーの声を取り入れる
- 数字を使って具体的にする
コピーの中でも一部分を変更するだけで、CVに差が生まれるケースもあります。ABテストを繰り返し、ユーザーの興味を惹きつけるコピーを目指しましょう。
ABテストの意味がない!?よくある失敗パターンと対策
ウェブでABテストについて検索すると、「ABテストは意味がない」「効果が出ない」などの意見を目にします。もちろん、ABテストはユーザー行動などの外的要因によって結果が左右されるため、仮説どおりの結果が出ないケースもあるでしょう。
しかし、ABテストの失敗原因が外的要因のみならず、実施企業に存在するケースも少なくありません。本章では、ABテストで起こりがちな失敗パターンを3つ紹介します。
- 十分なサンプル数が集まらない
- ABテストの仮説に誤りがある
- 同時に複数箇所でABテストを実行
それぞれの対策方法を交えてご覧ください。
十分なサンプル数が集まらない
ひとつ目の失敗パターンは、検証に必要なデータサンプルが集まらないケース。ABテストの実施期間が短かったり、ネットショップへのアクセス数が少なかったりで、十分なサンプル数を確保できないのです。
サンプル数が少ない場合には、データに偏りや偶発的な要因が含まれる恐れがあり、各パターンの検証が困難です。たとえば、10人中8人がAパターンを評価したとしても、偶然8割の人が評価した可能性を否定できません。
一方、10,000人中8,000人がAパターンを評価した場合、データとしての信憑性が高いため、各パターンに優劣をつけられるでしょう。ABテストで失敗しないためには、十分なサンプル数を確保することが重要です。
主に下記2二つの方法で、サンプル数を確保するのが有効です。
- テスト期間を長めに設定
- アクセス数の多い要素からABテストを実施
ABテストの仮説に誤りがある
ふたつ目の失敗パターンは、ABテストの仮説に誤りがあるケース。ABテストは、仮説を検証するための手段です。
たとえば、「CVRを高めるためには、商品ページのコピーを最適化することが有効」との仮説に基づき、複数パターンを用意して効果を検証するとします。もし仮説が正しければCVRの改善が見られますし、仮説に誤りがあれば当然改善は見られません。
そのため、ABテストを成功させるには、仮説を立案するにあたって、適切にデータを分析し、現状の課題と課題の所在を把握することが重要です。
同時に複数箇所でABテストを実施
みっつ目の失敗パターンは、同時に複数箇所でABテストを実施するケース。たとえば広告の画像とコピーを一度に変更した場合、どの改善で効果が出たのかを把握できません。
そのため、ABテストを実施する際には、広告の画像のみ、広告のコピーのみなど単一の要素を変更し、最適化を目指しましょう。
ネットショップのABテストで役立つ3つのツール
ネットショップのABテストを実施する際に、ツールを用いることで、データ分析や効果の検証を効率化できます。
ABテストをサポートするツールには、さまざまなものがありますが、中でもおすすめな3つのツールを紹介します。
- Google オプティマイズ
- Optimizely(オプティマイズリー)
- SiTest(サイテスト)
Googleオプティマイズ
Google オプティマイズは、Googleから無料で提供されているツールです。2パターンの効果を検証するABテストのみならず、複数の要素を比較する多変量テストにも対応しています。
テストの進捗を管理できるレポート機能やGoogleアナリティクスとの連携機能など、無料でありながらさまざまな機能が搭載されています。同時に5五つまでABテストを管理できるため、複数のネットショップを運営している場合でも問題なく利用できます。
また、有料コースも用意されているため、必要に応じて機能の拡充が可能です。有料プランでは、分析結果の要因分析やより細かな分析ができ、無料プランの一部制限機能が解放されます。まずは無料のツールから試したい方に最適なABテストツールです。
Optimizely
Optimizelyは、世界シェアNo. 1を誇る信頼性の高いABテストツールです。操作性も高く、ビジュアルエディタを活用すれば、コーディングの知見がない方でもABテストを実行できます。
豊富な分析機能に加え、独自の分析手法も設定できるため、デバイスやキャンペーンなど、さまざまな観点から多角的にテスト結果を検証できます。アメリカで開発されたツールですが、サイトやサポートは日本語にも対応。また、ABテストやOptimizelyに関するノウハウをメディアで発信しているため、多くの学びがあるはずです。
Optimizelyは、信頼性の高いABテストツールをお探しの方におすすめのツールです。
SiTest
SiTestは、サイトの分析から改善施策までを一貫してサポートするツールです。本来は、ランディングページを最適化するためのツールですが、ABテスト機能やレポート機能が搭載されているため、ネットショップの最適化にも活用できます。
ヒートマップ解析や録画再生機能が搭載されており、ユーザーの行動データを取得可能。収集したデータをもとに改善パターンを立案できるため、効果的なABテストを実現できるでしょう。
また、アクセス解析機能やEFO(エントリー・フォーム・オプティマイゼーション:入力フォーム最適化)など、ネットショップの改善に欠かせない機能が網羅されています。無料トライアルも用意されているため、実際に利用して試してみるのも良いでしょう。
ABテストをおこないネットショップの最適化を目指そう
この記事では、ネットショップにおけるABテストを紹介しました。ABテストを実施することで、より効果的な改善施策を実行でき、ネットショップを最適化できます。
ただし、ABテストで正確な効果を検証するには、準備段階の目標設定や仮説の立案が重要です。正しくABテストをおこない、ネットショップの最適化を目指しましょう。