「ネットショップ・ECサイトをはじめたいけど、どのサービスを使えばいいだろう」とお悩みの事業者様も多いはず。
今回は、世界で最も利用されているECプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」の評判・導入事例・手数料の3つの項目ごとに特徴を洗い出し、どんな方におすすめのASPカート(ショッピングカートサービス)かを紹介していきます。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
ECNOWはJPholic株式会社が運営する、 ネットショップ情報メディアです。
30社を超えるECコンサルティング実績や自社ECの運営経験をもとに、 「これからECをはじめる」「ECをいまよりもっと活用したい」という声にお応えします。
ASPカートとは
ネットショップ・ECサイトを開設する際に前提知識として知っておきたいのが「ASPカート」です。
ASPカートは、一言でいうと「ネットショップに不可欠な店舗機能を提供するサービス」のことで、ショッピングカートASPやネットショップサービスと呼ばれることも。
ASPカートを利用することで、複雑なソフトウェアの導入や、高度なプログラミング知識がなくても、比較的短期間でECサイトを制作することができるのが特徴です。
例えば、利用できる機能として、以下のようなものが用意されています。
- 商品ページを含む各ページ作成機能
- 商品をカゴに入れ、決済完了までをサポートするカート機能
- 商品・在庫・顧客などの情報管理
ただし、ASPカートは決められた枠組みのなかでのカスタマイズに限定されるため、「かゆいところに手が届きにくい」のも事実です。
ASPカートの特性を理解したうえで、どのサービスを使うか判断することが重要です。
Shopify(ショピファイ)とは
引用:https://www.shopify.com/jp
Shopify(ショピファイ)は全世界175カ国、170万店舗以上のストアで利用されている世界最大のECプラットフォームです。
2004年に創業されたカナダ発のASPカートサービスで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しているグローバル企業でもあります。日本市場へは2017年に参入し、日本人スタッフも配置され、管理画面の日本語などローカライズが進められています。
初期費用なしで月額課金制、そしてデザイン性も高く、シンプルで高機能な上に、さらにクラウド型(SaaS型)のため日々バージョンアップされている、現代のニーズにマッチしたASPカートと言えるでしょう。
月額費用は3つのプランが用意され、一番安いベーシックプランは、25ドル(約3,000円)で利用可能です。
Shopifyを利用する大きなメリットとして、
- 低コストでECサイトの運用がはじめられる
- 機能追加のためのアプリが豊富で拡張性が高い
- 越境ECに対応している
- APIによるシステム連携で業務効率化が実現可能
- サイトの構築や更新がかんたんにできる
- 各SNSに連携可能
- クラウド型(SaaS型)サービスで最新システムが利用できる
などがあげられます。
Shopifyの評判は?
実際に、Shopifyを導入することでどんな効果や、メリット・デメリットがあるのでしょうか?
実際に投稿されたレビューからその一部をご紹介していきたいと思います。
Shopifyのポジティブな口コミ、評判
引用:https://www.itreview.jp/products/shopify/reviews
- 信頼性が高く次世代の業界標準になりそうな感触
- ランニングコストが安価で本格的なECサイトの構築が可能
- 簡単に操作できるオールインワンのEコマースソリューションです
- 信頼感と柔軟性の高いECサイトを、安価に構築できる
- 管理画面がモダンでシステムもモダン
- プログラミングの知識がなくてもEC運営が概ねできて感激です
圧倒的に多かったのは「価格」「デザイン」「越境EC」をメリットにあげる口コミです。
価格は先述とおり、ベーシックプランが月額25ドルから使えることもあり、ASPカートのなかでも最安値の部類に含まれます。「最低限の機能を備えたネットショップを素早く作りたい」という要望にこたえる価格設定は大きなメリットでしょう。
デザイン面も好評で、HTMLやCSSの知識がなくとも直感的にカスタマイズできる高品質なデザインテンプレートが多数用意されています。
そして何よりShopifyの代名詞でもある「越境EC」の機能は使わない手はありません。「越境ECサイトを新たに立ち上げる際、他のASPカートと比べ、導入までの初期コストが安価」「個人ではなかなかにハードルのある越境ECが安易にできる」といった口コミが見られました。
ネガティブな口コミ、評判
引用:https://www.itreview.jp/products/shopify/reviews
- まだ英語しか対応していない部分がある
- サポート体制がまだ弱い
- 利用料金がドル建てなので請求がいくらになるのかわかりづらい
- 設定すべき点、気を付けるべき点がいろいろな画面にまたがってしまっていてわかりにくい
- また機能が追加できるアプリは魅力の一つですが、ほぼ英語
- 同様のアプリではどれがいいのかなどで迷ってしまう
- 日本企業が提供しているネットショップのサービスと比べ、UI的には若干使いづらいところがある
Shopifyの一番のデメリットとして「ローカライズ(日本への適応)が進んでいない点」をあげる声が多かったです。
Shopifyはカナダで生まれたサービスのため、英語表記がベースになっています。最近では徐々にローカライズが進み、ヘルプやサポートも日本語対応してきたものの、海外特有のUIや表現に苦戦する事業者様も多いようです。
また、サードパーティーが提供しているアプリは日本語に対応していないものも多く、日本語でのカスタマイズのための情報も少ないため、アプリの選定や設定方法に悩むという声も。
テンプレートを使って直感的にネットショップが作れるメリットがある一方、しっかりと作り込むにはフロントエンドの知識が必須な点もデメリットにあげる方が多かったです。ShopifyはLiquid(リキッド)というShopify特有の言語を利用しているため、カスタマイズをするためにはフロントエンドの知識の習得が必要になります。
Shopifyの口コミ・評判まとめ
Shopifyはとにかく使い勝手が良いです。
とにかくシンプルかつ高機能で、簡単にECサイトの運用・構築ができるうえに、これまでに紹介したようなメリットのほかにも「無料SSL対応」や「SNS連携」「無料カゴ落ち機能」など、集客やCVR改善に効く機能も備えています。
アプリによる拡張性の高さもメリットの1つ。Shopifyはアプリのマーケットプレイスである「Shopify アプリストア」をもち、「集客」や「販路拡大」「ストアのカスタマイズ」など、目的や課題ごとにアプリが用意されています。
メリットばかりに目がいきがちですが、もちろんデメリットも存在します。
初期費用や決済手数料がかからない点では比較的安価に使い始められるShopifyですが、ネットショップの運用に必要な機能をアプリで追加していくと、思っていたよりもランニングコストが高額になるケースも。
例えば、ネットショップの運営に必須のSEOを実施するためのアプリ「SEO manager(20ドル/月)」や商品レビューの収集と表示を行うレビューアプリ「Judge.me(15ドル/月)」、領収書や納品書をPDF出力するための「Quick Order Printer かんたん帳票出力(9ドル/月)」など、日本国内のASPカートでは通常搭載されている機能も一部有料で追加しないといけない点には注意が必要です。
Shopifyの利用料、手数料
ここからはShopifyのプランを紹介します。
Shopifyのプラン
Shopifyには以下の3つのプランが存在します。
ベーシック | スタンダード | プレミアム | |
月額料金 | $29(約3,790円) | $69(約9,017円) | $299(約39,084円) |
国内発行カード手数料 | 3.4% | 3.3% | 3.25% |
海外/Amexのオンラインクレジットカード手数料 | 3.9% | 3.85% | 3.8% |
JCBのオンラインクレジットカード手数料 | 4.15% | 4.1% | 4.05% |
スタッフアカウント数 | 2アカウント | 5アカウント | 15アカウント |
プランにより付帯する機能と販売手数料に差があります。
どのプランも初期費用がかからず、プラン変更はいつでも可能です。低コストで導入可能なShopifyを利用すれば、スモールスタートできるのが嬉しいポイントです。
これら3種類のプラン以外にも、月額わずか$5米ドルでSNSアプリやメッセージングアプリを通じて商品を販売できるスタータープランや、エンタープライズ向けのShopify Plus(ショッピファイプラス)というプランがあり、合計で5種類の料金プランがあります。
それぞれのプランについて
ベーシックプラン
最も安価なベーシックプランは、月額29ドル(約3,790円~)と低コストでスタートができる上に、ECサイトを初めて立ち上げる方でも十分にクオリティの高いサイトを構築することができます。
上位プランと異なるのは「スタッフアカウント数が2名まで」「在庫のロケーションが最大4つまで」という点です。
初めてネットショップやECに取り組む方、少人数でECサイトの管理や運営を行なう方におすすめです。
スタンダードプラン
スタンダードプランは月額69ドル(約9,017円)で利用可能です。3つの主要プランの中で、中間に位置するプランです。
ベーシックプランよりも月額料金が高い分、クレジットカード手数料が低く設定されており、スタッフアカウント数も5つまで増えます。
スタンダードプランからはShopifyのプロフェッショナルレポート機能も利用可能。特定の商品の販売データ、リピーターとなっている顧客の情報、新規のお客様とリピーターへの販売の比較などが取得でき、サイトの分析に役立ちます。
チームでECサイトの管理・運用を行いたい方、一定以上の売上が見込める方、データ活用しサイトの分析・改善を行いたい方におすすめです。
プレミアムプラン
プレミアムプランは月額299ドル(約39,084円)で、Shopifyの3つのプランの中で最も高額です。
プラン自体の費用は高いものの、その分、カード手数料は3.25〜3.8%と最も安く設定されているため、売上規模が大きいショップには非常におすすめのプランと言えます。
プレミアムプランでは、レポート機能がスタンダードプランよりも強化されたカスタムレポートを作成可能です。
スタッフアカウント数の上限も15個までになり、チームでマーケティング施策を実施するのにうってつけといえます。
また、「関税と輸入税の計算機能」もプレミアムプランの特徴です。外部のアプリに頼ることなく、チェックアウト時に関税と輸入税を徴収することができます。
ECの売上規模が大きく安価な決済手数料の恩恵を受けられる方、広告やSNSなど幅広いマーケティング施策に積極的に力を入れていきたい方におすすめ
Shopifyでのネットショップ制作の事例
ここでは、Shopifyの導入事例について紹介していきます。最初に紹介するのは沖縄がほこるビールブランド「オリオンビール」についてです。
オリオンビール
日本には大手ビールメーカーが5社存在します。サントリー、キリン、アサヒ、サッポローの4社に続く5番目のメーカーが沖縄のオリオンビールです。
そのオリオンビールのECサイトがいま絶好調です。
アナログなサイトから大幅刷新
2020年7月、オリオンビールのECサイトは大刷新されました。
今では考えられませんが、2010年に立ち上げられた旧サイトは、ECサイトとは名ばかりのフォームからオーダーし、銀行振込で支払うアナログな仕組みだったようです。
ECサイトの刷新後、ビジュアルを大きく見せられるワンカラム(一列)デザインとなりました。
オリオンビールの定番商品が並ぶほか、オリオンビールのロゴが施されたTシャツや島ぞうりといったオリジナルグッズ、さらには沖縄そばや島らっきょうといったビールと相性バツグンの沖縄県産品まで幅広いラインナップを魅せるためのデザインを実現しています。
まさに自宅で「沖縄時間」を楽しめるネットショップと言えるでしょう。
2022年現在、オリオンビールは定期宅配、いわゆるサブスクリプションサービスも始めています。リニューアル当初よりサブスクリプションの導入は念頭にあったようで、ショップオープン後の拡張性の高さがShopifyを選んだ背景にある模様です。
Allbirds(オールバーズ)
Allbirds(オールバーズ)は2016年に創業したアメリカの靴ブランドで、天然由来の素材を使い環境に配慮したサステナブルで快適なシューズを開発、販売しています。
アメリカのほか、イギリスやカナダ、ドイツ、オーストラリアなど様々な国に進出しており、日本でも原宿や丸の内荷店舗をもつ、世界的にも知名度の高いD2Cブランドです。
AllbirdsはECシステムを共通化し、グローバル展開をスムーズにすすめることを目的に、多言語・多通貨決済に対応するShopifyを採用しています。
D2Cビジネスについては下記記事も参考にしてください。
益子ウェブ陶器市
続いて紹介するのは、Shopifyで制作された益子ウェブ陶器市についての事例です。
1966年(昭和41年)からつづく益子陶器市は、県内はもとより、全国各地から春には約40万人、秋には約20万人が訪れる大規模行事です。しかし、2020年は世界中で流行したコロナウイルスの影響から、初めて中止となってしまいました。
中止をきっかけにオンラインで陶器市を開催することが決定。わずか3週間ばかりの準備期間で、Shopifyを利用したウェブ陶器市のサイトが立ち上げられました。
その結果、4月29日から5月20日までの約1ヶ月で55万件のアクセスから、「4,700万円」を売り上げ、見事に益子ウェブ陶器市は大成功を収めました。
益子ウェブ陶器市の事例から、短期間でも成功するECサイトをShopifyで作れることがわかりました。同様に、Shopifyが大きなデータ量に耐えられるプラットフォームであることも再認識され、今後は益子ウェブ陶器市の成功から需要や人気が拡大していきそうです。
まとめ
越境ECにも強い世界シェアNo.1のShopifyについてご理解いただけましたでしょうか。
ネットショップ・ECサイトを小さくはじめ、大きく育てられる点がShopifyの最大の魅力です。
Shopifyの拡張性の高さはもちろん魅力でもある一方で、運営には一定以上のリテラシーと英語の読解能力がもとめられます。
初心者におすすめするメディアも多いですが、Shopifyを十分に利活用できるのは中級者以上のEC事業者さんでしょう。