小規模から気軽に始められるネットショップは、企業も個人も参加しやすいビジネスです。今や多くの人が、本業副業問わずにネットさせるからハカショップを運営しています。
管理や運営の手軽さが長所のネットショップですが、実際のところ開業する手続きは難しいのでしょうか。この記事では、ネットショップ開業に必要な手続きや、注意したいポイントについて解説していきます。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
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ネットショップは実店舗より開業しやすい
商品を販売するにあたって、ネットショップと実店舗ではどちらのほうが良いのでしょうか。商材や状況にもよるので、一概にどちらの方が良いと断言することはできません。しかし「開業する」という点で言えば、実店舗よりもネットショップのほうが開業しやすいと言えるでしょう。
その主な理由は、以下の3つです。
- 最短1日で開業可能なのですぐに行動できる
- コストが0円〜なので気軽に開業できる
- 世界中の人の集客が可能
それぞれについて、詳しく解説していきます。
最短1日で開業可能なのですぐに行動できる
ネットショップは、最短1日で開業が可能です。思い立ったらすぐ行動できるため、熱意が失われる前にショップオーナーになることができます。
また、すぐに開業できるということは、機会損失も少ないと言えます。当然ながら、お店を開業する準備期間は、売り上げは発生しません。そのため、開業を決意したら一刻も早く商品を売り始めることが大切となります。ネットショップで開業すれば、実店舗よりも遥かに早いスピードで、商品の販売に着手できるでしょう。
コストが0円〜なので気軽に開業できる
ネットショップ開業のコストは、最低0円からです。そのため、資金調達を待って開業しなくても、すぐに商品を販売できるようになります。
実店舗の場合、立地や家賃、人件費、什器など開業時に多くの費用がかかります。また、光熱費などのランニングコストも計算しておかなければいけません。
ネットショップの中には有料プランもありますが、実店舗を構えるよりも遥かに安価です。ブランディングや販売により力を入れていきたいのであれば、ネットショップ開業のほうがベターな選択と言えるでしょう。
世界中の人の集客が可能
ネットショップを開業すれば、世界中の人の集客が可能となります。もちろんターゲティングは必要です。日本語サイトに外国人の集客をするのは、到底無理な話でしょう。しかし、海外向けサイトを用意すれば海外のお客さんの集客も可能です。
例えば日本製の商品を海外に住む人向けに販売しようとする場合、実店舗展開では不可能です。日本にいながら海外の人に商品を販売できるのは、ネットショップならではの大きな魅力と言えるでしょう。
また逆に、海外に住む人が現地で調達した海外製品を日本人向けに販売するというケースもあります。一部の実店舗でしか取り扱いがなかった海外製品をネットショップで販売すれば、喜んでくれるお客さんも多いでしょう。
ネットショップの開業に必要な手続き
ネットショップの開業に必要な手続きはとして必要なのは、開業届の提出です。個人が事業を始める際に必ず必要になってきます。
開業届を提出する:入手方法
開業届の正式名称は「個人事業の開廃業届出書」です。原則「事業開始から1ヶ月以内」に提出しなければなりません。
開業届の入手方法は、以下の2つの方法があります。
①税務署で開業届を手に入れる
最寄りの税務署で、開業届を受け取りましょう。実際に足を運んでも良いですが、国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm)のホームページからのダウンロードも可能です。もしも書き方が分からなければ、税務署の職員にアドバイスをもらって記入することも可能です。
②開業freeeを利用する
「開業freee(https://www.freee.co.jp/kaigyou/)」は、オンラインで必要情報を入力するだけで開業届が完成するサービスです。税務署に行ったり、書き方を調べたりする手間が省けます。開業届の記入に不慣れな方は、このようなサービスを利用することが確実な方法と言えるでしょう。
開業届を提出する:提出方法
開業届に必要な情報を入力したら、税務署に開業届を提出しましょう。
開業届の提出方法は以下の2つです。
①税務署へ持参もしくは郵送する
開業届には「個人番号、屋号、所得の種類、開業日、青色申告承認申請書、課税事業者選択届出書、事業の概要、給与の支払いの状況」などを記載する必要があります。これらを記載した上で、管轄の税務署に持参もしくは郵送しておきましょう。
②e-Tax(国税電子申告・納税システム)で電子申請をする
国税庁によるサービス「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を使って、開業届を提出することも可能です。確定申告をする際に馴染みのあるシステムですが、開業届にも使えるものとなっています。オンラインで完結するので、比較的手軽に開業届が提出できるでしょう。
最も簡単に開業届を提出するのは「開業Freee」の利用
開業届は馴染みがないという方がほとんどなので、記入方法に戸惑ってしまいがちです。どこに何を書けば良いのかも分かりづらいので、苦労してしまう方も多いでしょう。このような場合はは、ぜひ開業Freeeを利用してみてください。ネットショップの開設のみならず、個人事業主の開業届作成には「開業Freee」が最も分かりやすいです。
開業Freeeを使えば、開業届がダウンロードでき、どこに何を記入すれば良いのかがサポートされます。オンラインで開業届の記入をし、それをプリントアウトして税務署に提出してください。
開業届を出すことは個人事業主としてとても大切なことですが、最も大切なのは早くネットショップを軌道に乗せることです。煩わしい書類関係を迅速に済ませるためにも、開業Freeeなどのサービスを利用して開業届の提出をスムーズに行ってください。
開業届は必ず提出しなければならない?
原則、開業届は提出が決められています。しかし実際には罰則規定などがないため、届出を行っていない事業主もいるのが現実です。
では、なぜ罰則規定がないのに開業届を出す必要があるのでしょうか。それは、節税効果が期待できる「青色申告」ができるようになるためです。ネットショップでの収入は「事業所得」とみなされるので、一定額以上の収入がある場合は「確定申告」が必要となります。確定申告を行う際、青色申告ができるようになっていれば節税効果が期待できます。
開業届けを出せば青色申告ができる
開業届けを提出することにより、青色申告ができるようになります。青色申告をすることにより、最大で65万円を所得金額として控除することができるのです。また赤字申告をすれば、3年間まで納税を繰り越すことができます。
青色申告は必要経費の幅が広く、例えば自宅をオフィスとして利用している場合などは一部が経費の対象になります。また、家族への給与も経費の対象になるので、従業員に家族がいる場合は経費として換算しましょう。
しかし青色申告のデメリットとして、確定申告の方法が少々複雑であるという点が挙げられます。少しでもお金を節約したいのであれば青色申告、面倒であれば「白色申告」を選択してましょう。
開業届は就労証明・開業している証明になる
ネットショップを開業するだけでは、就労(開業)しているという証明にはなりません。そのため、公な場で就労証明を求められても「無職」とされることが多いです。例えば保育所や学童保育などを利用する場合は、親の就労証明が必要な場合があります。もしも親が就労していなければ、自宅で保育できると判断されて入所不可能とされるケースが多いです。開業届を提出していることによって就労証明になるので、該当する方は開業届を提出しておくようにしましょう。
また融資を受ける場合や給付金、支援金などの申請をする場合も開業届が必須です。公的な機関から「事業を営んでいるかどうか」で給付を判断されることになります。今予定していなくても、公的な施策が始まった時に迅速に申請できるよう、早めに開業届を提出しておくことをおすすめします。
開業届を提出すれば小規模企業共済に加入できる
「小規模企業共済」とは「経営者の退職金制度」と呼ばれています。つまりネットショップのオーナーにとっての退職金共済です。退職や廃業時に備えて毎月一定額の掛金を支払っていれば、共済金を受け取ることができます。
また小規模企業共済の大きなメリットは、所得控除の対象になることです。退職金を積み立てつつ節税できるので、有効に資産運用ができる仕組みとなっています。
開業届を提出していれば屋号(事業名)の入った口座が作れる
開業届を提出する際には、屋号(事業名)を考える必要があります。いわば自社の名前となるものなので、それぞれの思いを込めた屋号を付けられることでしょう。そしてその屋号は、金融機関口座にも入れることができるので非常に便利です。
プライベートの口座とビジネス用の口座を分けることは確定申告の際などにも便利ですが、屋号が入っていることでよりわかりやすく管理できます。
ただしビジネス用口座の開設方法や証明書の種類は金融機関によって変わる可能性もあるので、気になる金融機関に直接問い合わせをしてみてください。
ネットショップ開業の際、商材によって届出が必要な場合も
ネットショップで商品を販売する場合、実際の店舗と同じように商材によっては届出が必要です。どんな物でも自由に販売可能ではありませんので、販売する際には注意してください。例えば以下のような商材は届出が必要です。
◆中古品
古物商許可
◆食品
食品衛生法に基づく営業許可
◆健康食品
医薬品医療機器等法に基づく許可
◆酒類
通信販売酒類小売業免許
◆医薬品
薬局開設許可、医療品販売許可、特定販売届出
◆化粧品
化粧品製造販売許可
※ブランド化粧品を直接輸入販売する場合
医薬部外品製造販売許可
※国内の製造業者や輸入業者からの仕入れの場合は不要
ネットショップ開業で取り扱う際に注意したい商材
ネットショップ開業の際に、以下の商材を取り扱う場合は注意してください。どんな商品でも自由に販売して良いということはありません。
中古品
中古品を取り扱う場合は、警察署で許可申請を行う必要があります。店舗がある住所を管轄する警察署に問い合わせてください。
また注意点があります。買い取りをした場合は、一度も使っていないものでも中古品として扱うと決められていますので、新品同様だからといって免除されるものではありません。
そして、中古品として扱われる品目は、以下の13種類となります。詳しくは、管轄の警察署に問い合わせてみるようにしてください。
- 衣類
- 機械工具類
- 金券類
- 事務機器類
- 時計・宝飾品類
- 自転車
- 自動車
- 自動二輪車・原動機つき自転車
- 写真機類
- 書類
- 道具類
- 皮革、ゴム製品類13
- 美術品類
詳細については、こちらの記事(https://www.makeshop.jp/main/know-how/opening/opening-request.html)でも紹介されています。該当する場合は、参考にしてください。
食料品
食料品は、保健所の許可が必要な場合があります。販売する形式によって必要な許可の有無が変わってきますので、所轄の保健所に相談してみてください。
酒類
ネットショップでお酒の取扱いができるのは、品目ごとの課税移出数量が3000リットル未満の規模の小さいものや輸入酒に限られます。
ネットショップ開業時の手続きで気を付けたいこと
ネットショップは、様々なサービスの台頭のおかげで開業のハードルが下がっています。知識がない個人でもネットショップを構えることができるので、参入する人も多いです。しかしその分、気を付けたいポイントもあるので注意しましょう。
気を付けたいポイントは、以下の3つです。
- 住所の開示は慎重に
- 確定申告を視野に入れる
- 事業とプライベートの通帳を分ける
それぞれについて解説するので、ネットショップ開業の手続きの参考にしてください。
住所の開示は慎重に
ネットショップを開業する際、住所を登録する必要があります。多くの人は店舗を構えていないので、自宅の住所を登録することになるでしょう。しかし、自宅の住所を不特定多数の人に見られることに不安を覚える方も多いです。プライバシーの観点からもおすすめできませんので、できれば自宅の住所は避けてください。
このように自宅を住所として登録したくない場合は「バーチャルオフィス」を利用しましょう。バーチャルオフィスは、簡単に言えば「住所を貸してくれる」サービスです。法人登記や個人事業主の住所登録の際に利用されます。実際にオフィスを借りるよりも安価に住所を借りれるので、プライバシーが気になるという方はバーチャルオフィスを検討してみてください。
また、住所を開示して良くても、賃貸住宅の場合は注意が必要です。事業所として登録することが禁止されている場合があります。
確定申告を視野に入れる
ネットショップで一定額以上の利益が出た場合、原則として確定申告が必要となります。一定金額とは「売上から経費を引いた金額(所得金額)が38万円以上」です。
また会社員の方であれば、会社で確定申告を行われているでしょう。この場合、ネットショップでの「売上げから経費を引いた金額(所得金額)が20万円以上」であれば、個人での確定申告が必要となります。
そして、パートやアルバイトで雇用されている方がネットショップで収入を得る場合は「売上げから経費を引いた金額(所得金額)が20万円以上」の時に確定申告が必要となります。しかし、家族の扶養内で働きたいと考えている場合はネットショップでの売上に注意しなくてはなりません。パートやアルバイトでの給与所得とネットショップの収益を合わせて「38万円未満」にしなければ、扶養から外れてしまいます。
このように、ネットショップ以外の収入源によって確定申告の有無が決まる場合もあります。ご自身がどの状況に当てはまるのかを考え、場合によっては税務署で相談するようにしてください。
事業とプライベートの通帳を分ける
事業とプライベートの会計を分けることによって、帳簿を付けることが楽になります。事業の帳簿を付ける際は、数字をぴったり合わせる必要があります。そこにプライベートな会計が入ってきてしまえば、帳簿付けが難しくなってしまうでしょう。
ネットショップ開業の際にはぜひ事業用の口座を作っておき、お金の流れがきれいに見える化されている状態を目指してください。
まとめ
ネットショップを開業するための手続きをご紹介しました。重要になってくるのは「開業届の提出」です。開業届や確定申告の知識を最初に学習しておけば、ネットショップの運営に集中できるでしょう。ネットショップの運営は楽しくもありますが、様々な管理が必要になってきます。在庫管理や顧客対応などの業務が頻発するので、公的な手続きはスムーズに行うに越したことはありません。ネットショップを円滑に運営していくためにも、開業の手続きをしっかり踏まえてスタートを切りましょう。