近年、EC業界では生成AIやデータ活用を取り入れる動きが広がっています。商品検索や顧客分析、サイト運営、物流改善など、さまざまな領域で新しい仕組みが実際の業務に使われ始めています。そこで本記事では、直近で発表された5つのニュースを取り上げ、EC事業者の皆さまにとってどのような変化が起きているのか、また今後どのような点に注目すべきかをわかりやすく整理します。
1. 「楽天市場」スマホアプリにエージェント型AIツール Rakuten AI を正式搭載
2026年1月5日、楽天グループはインターネット・ショッピングモール「楽天市場」のスマートフォンアプリに、エージェント型AIツール 「Rakuten AI」 を正式に搭載したと発表しました。AIコンシェルジュによる対話形式のインターフェースにより、希望予算・購入目的・活用シーンなどをテキストや音声、画像で入力すると、約5億点の商品から最適な商品提案を行います。これによりユーザーは効率的な商品探索が可能となり、EC運営側は商品発見率・購入率の向上に期待がかかります。今後はマーケティングデータと連携した精度向上も予定されています。
用語解説:対話形式のインターフェイス・・・ユーザーがキーワード検索ではなく、自然な文章や会話の形で条件や要望を入力し、AIが質問や提案を返しながら最適な商品や情報に導く操作方式。
3つのポイント
- 対話型AIがユーザーの商品探索を支援し、CVR向上・離脱低減の可能性が向上。
- 楽天市場アプリ内で約5億点の商品を対象にAI提案を実施。
- 精度向上や楽天エコシステム横断での活用が進むことで、顧客体験と購買接点の深まりが期待。
出典
https://netshop.impress.co.jp/n/2026/01/07/15383
2. 株式会社アイスタイル、AI分析ツール @cosme Copilot を正式ローンチ
株式会社アイスタイルは2026年1月15日にクチコミ分析に特化したAI分析ツール「@cosme Copilot」を正式リリースすることを発表しました。@cosmeに投稿されたユーザーの口コミデータをAIが解析し、商品評価の傾向、ターゲット属性、競合比較などを可視化し、商品企画・マーケティング施策に活用できる分析基盤を提供します。2025年春にパイロット版が提供されていましたが、今回正式版として全ブランドに解放されます。膨大な顧客の声をデータドリブンで活かすことで、意思決定の迅速化や施策効果向上が期待されます。
用語解説:データドリブン・・・顧客行動や購買データ、口コミ・レビューの分析結果などをもとに、施策の優先度や内容を判断・改善する方法。勘や属人的な判断ではなく、データを中心に運用設計する。
3つのポイント
- 定性的なクチコミを定量データ化し、企画・マーケティングの意思決定精度を向上。
- 2014年以降の投稿データを解析可能(対象商品は投稿ありの全商品をカバー)。
- ブランド理解や施策改善に活用が進むことで、消費者インサイトの活用が常態化へ。
出典
https://netkeizai.com/articles/detail/17033
3. ecbeing、EC事業者向け 伴走型AIサービス群「ecbeing AI+」 を提供開始
2026年1月7日、EC構築・支援プラットフォームを提供する 株式会社ecbeing は、EC事業者向けの伴走型AIサービス群 「ecbeing AI+」の本格提供を開始しました。ecbeingの構築実績1,600サイト超のノウハウを学習したAI機能群が、接客最適化、業務効率化、戦略支援まで一気通貫で支援を行います。具体的には、顧客の行動解析に基づくレコメンド、対話型検索、レビュー分析、自動応答ボット、CMS自動生成、データ可視化ツールなどを統合したサービスになります。
用語解説:CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)・・・WebサイトやECサイトのページ・商品情報・画像・テキストなどを、専門的な技術知識がなくても管理・更新できる仕組み。管理画面からコンテンツを編集・公開することで効率的に運用を行
3つのポイント
- 単機能ではなく戦略・施策設計まで伴走するAI支援で、人的負荷の低減と効果創出を両立。
- 1,600サイト超のノウハウをAIに統合。実務で成果を出せる機能として提供開始。
- AIによる戦略支援が普及すれば、中小ECのデータ活用格差縮小につながる可能性。
出典
https://eczine.jp/news/detail/17835
4. 株式会社Hacobu、2025年物流キーワードと2026年物流トレンドを発表
2025年12月24日、物流改善メディアを運営する株式会社Hacobu は、2025年の物流領域を象徴するキーワードと 2026年物流トレンド予測を発表しました。2025年の注目テーマは法規制対応や物流体制再構築で、中でも2026年4月から義務化される「特定荷主」の報告義務への準備が物流事業者・荷主双方で進むことが浮き彫りになりました。2026年の予測としては、ドライバー不足・働き方改革・燃料費高騰により物流コストの上昇が避けられない一方、自社物流改善への取り組みが競争力の分岐点になると示しました。
3つのポイント
- 法規制対応が物流改革の好機と捉えられ、実務対応・戦略立案の重要度が高まる。
- 2026年4月以降に「特定荷主」が中長期計画・定期報告義務の対象に(法義務化)。
- コスト上昇が続く中、戦略的な物流改革とデータ活用が競争力の鍵に。
出典
https://ecnomikata.com/ecnews/eclogistics/49160
5. 通販・ECにおけるAI利用の実態調査
エルテックスによる2025年に実施されたEC・通販企業のAI利用実態調査によると、法人における生成AI/AI活用の動きが業種横断的に加速していることが示された。この調査は多業種・複数セクターの企業を対象としており、AI導入・利用状況、活用領域、組織的なAI活用へのシフトを示すデータが集計されている。生成AIの導入率や利用領域の伸び、導入の課題などが数値として示され、実務での活用計画の策定や運用改善に役立つ指標となっている。
3つのポイント
- AIや生成AI活用の実態が可視化され、企業の投資判断や戦略設計の参考データに。
- 通販事業者のAI導入率は増加傾向(12.7%)と記録されており、今後の伸長が予想。
- 導入企業は増加傾向にあるものの、活用率・戦略的利用はまだ発展途上であり、教育・体制整備が鍵。
出典
https://netkeizai.com/articles/detail/17025
まとめ
今回取り上げた5つのニュースを整理すると、大きく二つの流れが見えてきます。まず、プラットフォームや支援事業者による新サービスの提供(①②③)を通じて、EC事業の立ち上げや運営に必要な機能が外部化・高度化し、事業者がより少ない負担で新しい取り組みに挑戦できる環境が整いつつあります。楽天の対話型AIによる購買支援、アイスタイルやecbeingによる分析・運用支援は、こうした「環境整備」の動きを象徴しています。
一方で、消費者側の行動変化を示す調査や分析(④⑤)からは、購買の意思決定がこれまで以上に多様化していることが分かります。商品を自ら比較・検討する「能動的な購買」だけでなく、レコメンドやレビューに影響される「受動的な購買」や、計画的な購入と衝動的な購入が混在するようになっています。事業者には、こうした幅広い購買パターンに対応できる設計と運用が、今後より一層求められていくと考えられます。

