ECシステムの構築にあたり「クラウドECってどのようなものなの?」「おすすめのクラウドEC構築サービスは?」などの疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
EC構築サービスの種類は無数にあり、自身の状況にあったサービスを選ぶのは困難を極めます。ECを立ち上げるのなら、各構築サービスの特性を理解しておくことが重要です。
そのEC構築サービスの一つにクラウドECがあります。
本記事では、クラウドECにフォーカスして、特徴やメリット・デメリットを解説します。ASPとの違いやおすすめのEC構築サービス、ECサービスの比較などもまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
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30社を超えるECコンサルティング実績や自社ECの運営経験をもとに、
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クラウドecとは
クラウドECとは、自社で保有するサーバーなどにプラットフォームをインストールすることなく、クラウド上でECサイトを構築・利用できるようにするサービスのことです。
従来、ECサイトを立ち上げるには、ECに必要なシステムを自社のサーバに構築する必要がありました。自社サーバを用意するには多大な費用がかかるだけでなく、停電やアクセス負荷など、あらゆる障害に対応できる技術も必要でした。
しかし、クラウドECを利用すると、ECに必要なシステムを「インターネットによりアクセスするECプラットフォーム(=クラウド)」を利用してECサイトを立ち上げることが可能になります。
さらに、最新のシステムを自動更新する「CMS機能」も搭載されているので、専門知識がなくても構築から保守まで一貫して行えます。
クラウドECのメリット
クラウドECはインターネット上でネットショップを構築できることが魅力ですが、他にもメリットがあります。
メリットとして以下の3つが挙げられます。
- 柔軟にカスタマイズできる
- 高度なセキュリティで安全性が高い
- 自動更新で最新のシステムを利用できる
クラウドECを有効に活用できるよう、メリットを押さえておきましょう。
1.柔軟にカスタマイズできる
クラウドECは拡張性・デザイン性が高く、柔軟にカスタマイズできます。
例えばECサイトの需要が拡大した際、フルスクラッチの場合はその都度システムのリニューアルを行わなければいけません。
しかしクラウドECは、受注数の増加に応じてサーバーを強化する機能や、基幹システムとの連携機能がそなわっているため大幅なリニューアルは不要です。
また、デザインはフルスクラッチほど自由度が高くないものの、テンプレートが豊富にそろっています。
このような機能を利用すれば柔軟にカスタマイズが可能です。また、システム管理やサーバーの負荷対策が不要なのでコストも軽減できます。
2.高度なセキュリティで安全性が高い
クラウドECを利用すると、常に高いセキュリティ体制のもと運営が行えます。
ECサイトは顧客情報などの機密情報を扱うため、セキュリティ体制は万全でなければいけません。自分でECサイトを構築した場合は、脆弱化を防ぐために定期的にOS・ソフトウェアのアップデートが必要です。
一方、クラウドECではマルウェアが自動で更新されるので、別途でセキュリティサービスを用意することなく情報漏えいのリスクを回避できます。つまり、保守・メンテナンスのためにセキュリティに強い専門家を配置せずとも、ECサイトを運営することが可能だということです。
3.自動更新で最新のシステムを利用できる
検索エンジンのトレンドは流動的で、日々多様なソリューションが誕生しています。クラウドECは、最新のソリューションを取り入れたシステムがアップデートされるので、常に最新の環境で構築・運用が可能です。
パッケージやフルスクラッチで構築した場合は、定期的なメンテナンスが必要です。また、機能を追加したいときは自身で開発しなければいけません。その都度コストがかかるのはもちろん、改修が多いとシステムの保守性が下がるリスクも高まります。
一方、クラウドECでは、既存機能の更新や新機能の追加、ユーザビリティーの改善がすべて自動で行われます。
手動更新のような更新忘れやミスが起こる恐れがないため、保守メンテナンスの精度を維持する対策にも有効です。
クラウドECのデメリット
クラウドECはセキュリティ体制に優れ、最新のシステムが自動更新されるなど、使い勝手の良さが魅力です。
しかし、その一方で自分で構築・管理するECサイトと比較すると、思わぬトラブルに見舞われるなどのデメリットもあります。
デメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 自社管理に移行できない
- 費用対効果が合わない場合がある
- 突然運用できなくなるリスクがある
導入後に後悔しないよう、デメリットも押さえておきましょう。
1.自社管理に移行できない
クラウドECの大半はソースコードが開示されていないため、自社管理への移行は不可能です。
クラウドECは、ASPよりはカスタマイズ性があるといえど、フルスクラッチほどではないため、「より高機能なシステムを導入したい」「オリジナリティを高めたい」という場合は、自社管理に切り替える必要があります。
しかし、クラウドECはソースコードの開示がなく移行が不可能なので、クラウドECを手放して新規で構築し直すほかありません。
そのため、導入前にクラウドECのサービスが自身のプランニングとマッチしているか慎重に判断しましょう。
2.費用対効果が合わない場合がある
本来クラウドECは機能を新たに開発・更新する必要がなく、長期的なランニングコストを抑えられます。しかし、ASPよりも操作性が良い分、初期費用やランニングコストが3倍以上かかるケースも少なくありません。
また、売上見込みが不透明だと費用対効果が合わず、定額を払い続けるよりも自分で運営した方がコストを抑えられる場合もあります。
クラウドECの初期費用は100万〜500万円、ランニングコストは月額数万円かかるため、採算が合うか確認しましょう。
3.突然運用できなくなるリスクがある
クラウドECを提供するサービス会社が倒産すれば、ECサイトはなくなってしまいます。
IT専門調査会社「IDC Japan株式会社」によると、国内クラウド市場は2026年には2021年比約2.6倍まで拡大すると予測されていますが、企業が倒産する可能性はないとは言い切れません。(※)
また、サービス会社がデータの消失や情報漏えいなどの問題を起こせば、顧客の信用を失い運用できなくなるでしょう。
デメリットを避けるには、サービス会社の事業規模や成長率、直近の業績などを確認して、安定した運営ができるか判断しなければいけません。
プラットフォーム上にサービスを構築するモデルでは、許容しなければならないリスクです。
※参考: IDC Japan株式会社|国内クラウド市場予測を発表(2022/6/14)
クラウドECとASPの違い
費用感(目安) | カスタマイズ性 | |
---|---|---|
クラウドEC | ・導入費用:100万~500万円 ・月額費用:3万~10万円 | ・オムニチャネル、O2Oなどの 多様な基幹システムとの連携が可能 ・CRM・BI・MAツールなどの外部ツールとの連携も可能 ・500万~50億円の売上規模(年商)に向いている |
ASP | ・導入費用:10万~300万円 ・月額費用:3,000円~5万円 | ・基幹システム、外部ツールとの連携には制限がある ・1億円以下の売上規模(年商)に向いている |
ECサイトの構築にあたり、比較されやすいのがクラウドECとASPです。
ASPとはインターネット上経由でサービスを利用する方法です。ショッピングカートを提供しているサービスのため「ASPカートシステム」とも呼ばれています。
どちらも必要な機能が搭載されていて自動更新もされるため、似たサービスと思われがちですが特徴に違いがあります。
2つの大きな違いは費用感とカスタマイズ性です。
クラウドECは搭載機能が充実している他、基幹システムや外部ツールの連携においても、ASPのように制限がありません。
APSはカスタマイズ性が低い分、クラウドECの3分の1程度のコストで運用が可能です。そのため、「コスト重視で基本機能があればいい」「売上規模が小さいためコンパクトに運営したい」という人にはASPが向いています。
ASPカートについては、「【比較】代表的なASPカート6選!あなたにおすすめなEC構築サービスは?」にて詳しく解説しています。
クラウドECはどんな人におすすめか
ここまでクラウドECの特徴やメリットを述べてきましたが、一概にすべての人に向いているわけではありません。
クラウドECがおすすめなのは以下のような人です。
- 売上500万〜10億円の中規模サイトの運用を検討している人
- 運用リソースが不足している人
クラウドECの強みは、自動の機能追加や外部連携にも幅広く対応しているカスタマイズ性です。
さらに、スペックなどの増設が可能で、アクセス過多でも保守が容易に行えます。たとえタイムセールなどで一時的にアクセス過多になっても、サーバーダウンの心配がありません。
一方で、売上50億円以上の大規模サイトのような複雑な構築は、コストが高額になるケースがあります。そのため、機能内で構築可能な中規模のサイトの運用に向いています。
EC事業の成長に合わせて検討しましょう。
おすすめクラウドECサービス比較と事例
2023年4月時点でクラウドECサービスは20社以上あるので、どのサービスを選ぶべきか迷ってしまう人も多いでしょう。
そこで、以下の3つのおすすめのクラウドECサービスを比較しました。
- GMOクラウドEC
- メルカート
- ebisumart
各サービスの特徴の他、導入事例も併せて紹介します。
GMOクラウドEC
「GMOクラウドEC」は、専門性が高い大規模サイトにも提供しています。オムニチャネルとの統合により、商品・顧客・在庫管理の一元化が可能です。
また、ネットショップ・SNS・実店舗といった複数の顧客接点の連携により、顧客満足度の向上が見込めます。
さらに、EC構築システムの移行もサポートしているので、フェーズごとにカスタマイズが必要な中〜大規模サイトの運用におすすめです。
「西川株式会社」はGMOクラウドECを導入し、サブスク形式のECサイト「Sleep Charge(スリープ チャージ)」を開設しました。ユーザーの30%以上がコースのグレードアップや購入につながっており、若い年齢層のユーザー獲得にも成功しています。
メルカート
「メルカート」は、ECパッケージの大手「ecbeing」を基盤に開発されたクラウドECプラットフォームです。
クーポン機能やレビュー、ランキングなどの標準機能が充実している他、「食品系」「定期通販」「アパレル系」など各業界に特化したパックを提供しているのが特徴です。
その他、集客をバックアップするWeb広告の運用やSEOなどのオプション機能、専門スタッフによるサポートなども手厚いので、初心者や少人数体制の運用に向いています。
「井村屋株式会社」ではモバイル対応を強化するためにメルカートを導入し、2020年7月にサイトのリニューアルを行ったところ2020年度の売上で前年比200%増を達成しました。
※参考:メルカート|導入事例
ebisumart
「ebisumart」は、導入実績約700社(2023年4月時点)を誇る大手クラウドECサービスです。O2Oやオムニチャネルなどの基幹システムとの連携で、構築から運用まで通気一貫でサポートしています。
また、標準機能に加えて予約販売や別精算ページの設置など、専門性の高いオプション機能も豊富でカスタマイズ性が高いです。
既存サイトのリプレイスにも対応しているので、システム連携による拡張やASPからの移行を検討している人に向いています。
音楽やダウンロード商品を扱う「スクウェア・エニックス」のECサイトもebisumartを導入しています。商品の管理体制の見直しを目的にebisumartを導入したところ、導入前と比較し受注性能が2倍アップしたようです。
※参考:ebisumart|お客様の声
まとめ
今回はクラウドECについて解説しました。
クラウドECとは、ソフトウェアやシステムがなくてもインターネット上でECサイトを構築できるサービスで、おもに中規模のECサイト運用に向いています。
柔軟なカスタマイズ性・高度なセキュリティ・新機能の自動更新など使い勝手に優れており、専門知識がなくても開発から保守まで行える点が魅力です。
一方で、ソースコードを開示していないため移行できない・費用対効果が合わないといったデメリットもあります。
また、サービスの機能や費用はそれぞれ異なるので、プランニングとマッチするクラウドECを選びましょう。