自社のECサイトやSNSを使用して、メーカー自身が注文者に直接商品の販売をおこなう「D2C(Direct to Consumer)」が、昨今人気だということをご存知でしょうか。
新型コロナウイルスの蔓延により、自粛生活が余儀なくされた今、家にいながらオンラインで買い物をする人が増えました。その影響から、最近多くの企業がD2C事業に参入しています。
この記事ではD2Cがどのようなものなのか、D2CとECサイトの違い、D2Cブランドの事例について説明します。D2Cに興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
ECNOWはJPholic株式会社が運営する、
ネットショップ情報メディアです。
30社を超えるECコンサルティング実績や自社ECの運営経験をもとに、
「これからECをはじめる」「ECをいまよりもっと活用したい」という声にお応えします。
D2Cとは
D2Cとは、Direct to Consumerの略語で、自社の商品を消費者と直接取引して販売する方法のことです。
つまり、D2Cは商品を販売する際、中間流通業者や小売り店を介さないビジネスモデルです。
D2Cは、従来のECと異なる以下のような特徴を持っています。
- 注文者とのダイレクトな販売形態
- 低価格での商品販売
- ライフスタイルを売る
- ミレニアル世代が対象
- コンテンツマーケティングと似ている
- SNS運用が鍵
注文者とのダイレクトな販売形態
D2Cは、メーカーなどの製造者が仲介(小売店・中間流通業者など)を介さずに自社ECサイトなどで直接販売することが特徴です。
従来は、事業者が企画した製品をOEM等で別企業に生産してもらったのち、小売店や広告代理店を介して消費者へと販売していました。
その販売形態だと、ブランド自身が、商品を買った人が「どんな人か」がわかりづらい状況でした。また、「どれほどのペースで」購入されているのかも、同じく分かりづらかったのです。
しかし、インターネットの普及により資本力が事業者や企業でも、直接消費者に商品を販売できるようになると、ブランド自身で商品を販売できるようになります。仲介が無いため注文者の情報を収集しやすく、その収集した情報に基づき、新たなサービスを生み出すことが可能になります。
ほかにも、SNS(Twitter・Instagramなど)を通じて、注文者とやり取りもできますので、自然と注文者からのブランドへの信頼度も上がり、ブランド自身のファンも獲得しやすくなります。
つまり、D2Cは「お客様とのつながり」を最大限に生み出し、活かすことができる販売形態と言えるでしょう。
世界観が重要
D2Cブランドが重要視するのが、「世界観」のような「情緒的な価値観」です。D2Cは、企画の時から物ではなく世界観を大切にコンセプトを練っています。
たとえばスーツケースを売る場合、「スーツケース」ではなく「旅」を売る、マットレスを売る場合は「マットレス」ではなく「いい睡眠」を売る、という考え方です。
つまり商品を売るという概念ではなく、生活、つまりライフスタイル全部の世界観をパッケージして販売するという概念こそが、D2Cの大きな特徴です。
D2Cの改革的な部分があります。それは、世界観と商品のマッチングです。モノ(商品)とコト(体験)の間の壁をなくし、注文者に新しい価値観を与えました。こうしたことから、D2Cを「コト付きのモノ」と表現することもあります。
低価格での商品販売
D2Cは従来の販売方法と比べ低価格で商品提供が可能です。
これまでは商品が消費者の手に届くまでに中間業者が必要だったため、その分のコストが値段に反映されていました。
D2Cは、先述したとおり直接顧客へと商品提供をするため、従来必要だった中間コストがかかりません。その分、品質の高い商品を低価格で販売できるようになるのです。
ミレニアル世代が対象
D2Cブランドは、ミレニアル世代(1980年〜1990年後半までに誕生した人々)以下を対象にしています。ミレニアル世代以降の人々は、デジタルネイティブ世代でもあり、新しい消費価値をもつ世代です。
この世代は、慎重で節約重視である一方で、ネットやスマホに精通し、ネットでの買い物に抵抗がありません。
また、リサイクル、ダイバーシティなどの感性が高く、エシカルなブランドを好み、価値観の多様化を体現している世代ともいえます。
機能性や価格といったこれまでの判断基準ではなく、ブランドの世界観やストーリー、その商品を使用するライフスタイルを含めて商品を選ぶ傾向にあることも特徴です。
D2Cの市場規模
2020年9月の売れるネット広告社のプレスリリースによると、D2Cの日本国内市場規模は、2025年に3兆円を超えるとされています。
「価値の多様化」と「消費の軸の変化」はまだまだ進んでいくなかで、「D2Cブランドを選ぶ消費者」はますます増えていきます。
D2CとECの違いは?
よく混同されるD2CとEC。どちらもインターネット上で商品の販売を行うという点は共通しています。
ECはElectronic Commerce(エレクトロニックコマース)の略で、電子商取引のことを指します。つまり、商品の取引形態をあらわす用語です。
一方、D2Cは先述したように「Direct to Consumer」の略で、1つのビジネスモデルです。
インターネット上で商品の販売を行うという点で、D2Cは広義の意味のECに内包されているといえます。
身近なもので例えれば、「飲み物」と「お茶」の関係でしょうか。お茶は飲み物というジャンルに内包されていますよね。D2CとECの違いについては、ざっくりとイメージできていればOKです。
D2Cブランドの事例紹介
ここまでD2Cの基礎知識を解説してきました。ここからはD2Cの事例について紹介していきます。
実際にD2Cとして作られたネットショップを見ることで、よりD2Cがどのようなものか理解していただけると思います。
Glossier
引用:https://www.glossier.com/
はじめにご紹介するのが、ニューヨークでできた化粧品ブランド、「Glossier」です。
Glossierは、VOGUE出身のエミリー・ワイスが2014年に美容ブログを立ち上げたり、ユーザーの声をよく聞き入れた商品作りで有名です。商品はもちろん、シック・シンプルな包装にもこだわり、SNS映えする点でも有名です。
ほかにも、製品がアルコールフリーなどの有害な物質を含まない作りになっているなど、メイクアップより、肌の質について考えた商品が特徴としてあげられるでしょう。こういった特徴はミレニアム世代に大きく支持されている理由として考えられます。
D2Cでいうところの、製品、モノを売るというわけではなく、「健康なメイクアップの生活」をユーザーに提供しているようにも思われます。SNSのフォロワーも、Instagramに至っては、フォロワー280万人です。ファンによる口コミでどんどん広がり、今ではアメリカのみならず日本でも人気をえています。
17Kg
引用:https://17kg.shop/
17kgは、若年層の女性を中心として、人気を博している、韓国の女性向けファッション通販ショップ。
Instagramを中心とした「欲しい!」と思わせる宣伝でファンを集め、急成長を遂げました。17kgは人気のあるインフルエンサーをモデルとして登場させたり、商品を垢抜けた見せ方をさせるなどしました。
また、17kgでは新作の商品を、コメントで投票による決定をおこなったり、「可愛いと思ったらコメント欄で投稿してね」といったInstagramの独特な運用方法が、ファンと企業のコミュニケーションアップにつながっています。ほかにも「#17kg」というハッシュタグを用いてファンに投稿をしてもらうことで、ファンの増加に拍車をかけています。
このように、Instagram、つまりSNSを中心に活動しているところもD2Cブランドの特徴でしょう。
Allbirds(オールバーズ)
引用:https://allbirds.jp/
Allbirds(オールバーズ)は2016年に創業したアメリカの靴ブランドです。
アメリカのほか、イギリスやカナダ、ドイツ、オーストラリアなど様々な国に進出しており、日本でも原宿や丸の内荷店舗をもつ、世界的にも知名度の高いD2Cブランドです。
メリノウールやユーカリの繊維、サトウキビといった天然由来の素材を使った環境に配慮したサステナブルで快適なシューズを開発、販売しています。
Allbirdsの創業者であるJoey Zwillinger(ジョーイ・ズウィリンガー)氏は、「より良い世界を作ろう」という言葉をよく口にするようです。その言葉に表されるように、Allbirdsは「サステナブビリティ(持続可能性)」を強く打ち出しています。
ブランドが目指す「ヘルス&ウェルネス」な世界感こそが、ユーザーに支持される要因の1つです。
まとめ
D2Cについて、少しでも知見を深めることができたでしょうか。
消費行動が「モノ」から「コト」へと変わりつつあるなか、一見すると「モノ」を売るように見えるD2Cというビジネスモデル。
「D2Cブランドはライフスタイルを売っている」ということが分かれば、D2Cが「コトつきのモノ」という新たな価値が生み出したことに気づくはずです。