ECサイトの決済方法のひとつである「代引き」について解説します。
代引きは、購入者が商品受け取り時に代金を支払う決済方法です。似たイメージのある「着払い」との違いのほか、商品購入者・ネットショップ運営者それぞれのメリット・デメリットなどについて説明します。
編集者
JPholic株式会社 ECNOW 編集部
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代引きとは:商品代金を受け取り時に支払う決済方法のこと
代引き(代金引換え)とは、ネットショップなどで購入した商品を受け取る際に、商品代金を支払う決済方法のことです。
一般的には、代金引換えサービスを提供している配送会社が販売会社に代わって代金を集金します。代引きの支払い方法は、配送会社にもよりますが、現金だけでなくクレジットカード決済を選択できる場合もあります。
代引きは、購入者にとって商品を確認してから代金を支払えるため、安心感があります。また、クレジットカードを持っていない人でも購入できることが利点です。
一方、代引きは配送料とは別に手数料が発生することが多く、購入者が負担に感じる場合もあります。
ネットショップ運営者は、代引きのメリットとデメリットを考慮したうえで、ネットショップの特徴や利用者層にあった決済方法を提供する必要があります。
着払いとの違い:受け取り時に支払う料金の内訳が異なる
代引きと同様に、商品を受け取ったあとに代金を支払う方法に「着払い」があります。どちらも配送会社の配達員に費用を支払うため、似たイメージがあります。これらはどのように違うのでしょうか。
代引きは、商品代金、送料と代引き手数料をまとめて支払う決済方法です。
一方、着払いは、商品の代金は事前にネットショップで決済し、受け取り時には送料のみを配送会社に支払います。したがって、代引きと着払いでは、商品受け取り時に支払う料金の内訳が異なります。
【商品受け取り時に支払う料金の内訳】
- 代引き: 商品代金 + 送料 + 代引き手数料
- 着払い: 送料のみ
購入者が代引きを利用するメリット・デメリット
代引きにはメリット・デメリットが存在します。代引きという支払い方法の特徴を理解した上で、上手に利用していきましょう。
購入者が代引きを利用するメリット
購入者が代引きを活用する場合のメリットを紹介します。
クレジットカードを持っていなくてもネットショップを利用できる
代引きは、商品を受け取る際に商品代金を現金で支払える決済方法です。クレジットカードを持っていない人でもネットショップで購入できるほか、カード番号を入力するのが面倒な人にとって便利に利用できることが特長です。
決済情報の流出や悪用などのリスクを防げる
多くのネットショップは情報セキュリティを徹底していますが、インターネット上のサービスに決済情報などを入力する以上、情報漏えいのリスクがあります。
また、システムの不具合や運営ミスによる二重請求などのトラブルも考えられます。ネットショップの運営やシステムに問題がない場合も、アカウントに他人がログインし、保存されている決済情報を悪用されるケースもあります。
代引きは、支払い情報などをオンラインで入力する必要がないため、ネットショップでの商品購入リスクを避けたい場合に適しています。
商品の到着を確認してから代金を支払える
代引きは、商品が確実に到着したことを確認してから代金を支払えるため、商品到着までに時間がかかる場合や、配送に不安がある場合に向いています。
万一、商品が届かない場合や注文したものと異なる商品が届いた場合には、ネットショップの規定に基づいてキャンセルできます。
購入者が代引きを利用するデメリット
購入者が代引きを活用する場合のデメリットを紹介します。
代引き手数料がかかる
代引きを選択する場合、配送会社に手数料を支払う必要があります。現金やクレジットカード払いの場合、購入者に手数料を求めるサイトは少ないため、他の決済方法と比べて高いと感じる場合もあるでしょう。
受け取り時に在宅していなければならない
代引きは、商品受け取り時に代金を支払うため、受け取り時に在宅していなければなりません。宅配ボックスや置き配を利用できず、もし不在だった場合は、再配達の手続きが必要です。また、防犯の観点から、配達員と玄関で対面することを避けたい場合には向いていません。
現金の用意が面倒
代引きは、クレジットカードや電子マネーで支払える場合もありますが、現金支払いが主流です。電子マネーが普及するなか、現金を用意する手間を面倒に感じる場合もあるでしょう。
購入者が代引きを使うべき場面
ネットショップで商品を購入しようとする人にとって、代引きが適しているのは次のような場合です。
- インターネット上にお金にかかわる情報を入力したくない
- 商品が確実に到着するのを確認してから支払いたい
- クレジットカードを持っていない
代引き支払いの魅力は、やはり安心感のある取引が可能になる点ですね。個人情報の漏洩リスクや、商品が届かない可能性を排除できるので、実店舗での買い物と近い支払いができます。
また、クレジットカードを持っていない場合も、代引き支払いはとても有効です。
ネットショップが代引きを導入するメリット・デメリット
ネットショップを運営しているかたは、上記で紹介した顧客の心理に合わせて、代引きを導入するか検討する必要があります。
ここでは、ネットショップ運営会社にとって、代引きを導入するメリット・デメリットを紹介します。
ネットショップが代引きを導入するメリット
ネットショップが代引きを活用する場合のメリットを紹介します。
販売機会の損失を防げる
購入者の中にはクレジットカードや銀行口座を持っていない人もいます。また、セキュリティ面の不安から決済情報を入力したくない人もいます。代引きを導入することで「決済方法がないから購入できない」という機会損失を防ぎます。
カゴ落ちを減らせる
カゴ落ちとは、ネットショップで商品をカートに入れたものの、最終的に購入しないことです。カゴ落ちの原因のひとつに、支払い方法の選択肢の少なさや、支払いに対する不安があります。
代引きは、商品の到着を確認してから支払えるため、お客様にとって安心できる決済方法です。また、代引きはクレジットカード情報を入力したり、コンビニに振込に行ったりする手間もかかりません。購入者が不安なく、スムーズに手続きできる手段を用意することで、離脱の防止につながります。
決済手数料の一部を購入者に負担してもらえる
代引きの場合、購入者が配送手数料を支払うことが一般化しています。クレジットカード決済の場合も、カード会社に決済手数料の支払いが必要ですが、この場合、ネットショップ側が手数料を負担するのが一般的です。
安全性・利便性の高い決済方法を提供する代わりに、購入者に決済手数料の負担を求められることがポイントです。
ネットショップが代引きを導入するデメリット
続いて、ネットショップが代引きを活用する場合のデメリットを紹介します。
長期不在などで返送される場合がある
購入者が長期不在などで商品を受け取れない場合、商品は配送会社によって返送されます。この場合、ネットショップ運営者は、商品の送料や手数料を負担しなければなりません。
購入者のキャンセルの意思を確認するなど、運営の手間がかかるほか、商品の在庫管理や再販売も難しくなります。
不当な受け取り拒否をされるリスクがある
代引きは、購入者にとって購入時の手間がかからない決済方法です。そのため、いざ商品を配送した際に「気が変わった」「同じ商品を他の店で安く購入した」などの理由で受け取りを拒否されるリスクもあります。
その場合、ネットショップ側は返送費や手数料の負担を求めるなど、対応の手間がかかります。
会員登録や決済情報の保存につながりにくい
代引きは、クレジットカード情報などを入力する必要がありません。そのため、ネットショップ運営者にとっては、会員登録や決済情報の保存につながりにくいというデメリットがあります。
会員登録や決済情報は、お客様の購買履歴や嗜好を分析したり、リピート購入やクロスセルなどのマーケティング施策を行ったりするために重要です。
ネットショップが代引きを導入すべき場面
ネットショップ運営者にとって、代引きを導入したほうがいいのは次のような場合です。
- クレジットカードを持っていない若い世代がターゲットの場合
- ネットショッピングに不安のある高齢者がターゲットの場合
- 多様な決済方法で、購入機会損失を防ぎたい場合
代引きの魅力は、機会損失を防ぐことができる点です。現代の支払い方法はクレジットカードが主流ですが、商材によっては有効となる場面があるでしょう。
配送会社各社の代引き手数料を比較
代引きを利用する場合、配送会社に代金の回収を代行してもらうための手数料が生じます。代引き手数料は、購入者が負担することが一般的です。代引き決済サービスを提供する主な配送会社の手数料を紹介します(2023年9月執筆時点)。
配送会社名 | 代引き手数料 |
---|---|
ヤマト運輸(宅急便コレクト) | 330円〜440円 |
佐川急便(e-コレクト) | 330円〜430円 |
日本郵便(代金引換まとめ送金サービス) | 330円〜550円 |
西濃運輸(カンガルー代引サービス) | 330円〜550円 |
ヤマト運輸(宅急便コレクト)
ヤマト運輸では「宅急便コレクト」の名称で代金引換えサービスを提供しています。
ヤマト運輸では、購入者が支払った代金引換額(商品代金・送料・ネットショップが設定した代引き手数料の総額)に応じて決済手数料が設定されています。ネットショップ側が設定する代引き手数料は、ヤマト運輸に支払う決済手数料を踏まえて自由に設定できます。
- 代金引換額 9,999円までの場合: 決済手数料 330円(税込)
- 代金引換額 29,999円までの場合: 決済手数料 440円(税込)
ヤマト運輸の代引き手数料情報はこちら
佐川急便(e-コレクト)
佐川急便は「e-コレクト」の名称で代金引換えサービスを提供しています。
佐川急便も、代引き金額に応じて手数料が段階的に設定されています。
- 代引き金額 1万円以下の場合: 代引き手数料 330円(税込)
- 代引き金額 3万円以下の場合: 代引き手数料 430円(税込)
佐川急便の代引き手数料情報はこちら
日本郵便(代金引換まとめ送金サービス)
日本郵便(ゆうパック)は「代金引換まとめ送金サービス」の名称で代金引換えサービスを提供しています。
ゆうパックのみで代引きサービスを利用でき、商品代金(引換金額)に応じて手数料が設定されています。
- 商品代金(引換金額)3万円まで: 代引き手数料 330円(税込)
- 商品代金(引換金額)10万円まで: 代引き手数料 550円(税込)
日本郵政の代引き手数料情報はこちら
西濃運輸(カンガルー代引サービス)
西濃運輸は「カンガルー代引サービス」の名称で代金引換えサービスを提供しています。
こちらも購入者から回収した商品代金に応じて手数料が設定されています。
- 商品代金(税込)3万円まで: 代引き手数料 330円(税込)
- 商品代金(税込)10万円まで: 代引き手数料 550円(税込)
西濃運輸の代引き手数料情報はこちら
代引きで商品を発送する方法
ネットショップ運営者が代引きを導入して、商品を発送するまでの手順を紹介します。
1. 代引きサービスを提供している配送会社と契約する
代引きサービスを提供している配送業者とサービスの利用契約を結びます。配送業者によって手数料や振込サイクルが異なるため、自社の条件に合うか事前に比較・検討しましょう。
2. 配送会社から指定された伝票を貼り付ける
受注手続きや梱包のプロセスは、他の支払い方法と同様です。梱包後は、配送会社が指定する仕様の伝票を貼り付けます。伝票には、代金引換である旨を明記する必要があります。
3. 配送業者が商品を回収
発送の準備ができたら、配送会社に商品を引き渡します。配送会社は、商品の配送状況や集金状況を確認する際に必要となる受領証を発行します。
4. 配送会社が商品を購入者に届ける・代金を回収する
配送会社は、購入者のもとへ商品を配送し、商品と引き換えに代金を回収します。
5. 配送会社がネットショップ運営者に代金を振り込む
配送会社が集金した商品代金は、一定期間ごとにネットショップ運営者に支払われます。振込金額は、購入者が支払った商品代金から、配送会社が設定した代引き手数料や振込手数料を差し引いた金額です。
ネットショップで代引きを導入する際の注意点
代引きを導入すると、購入者の利便性は高まり、ネットショップの売上に貢献する可能性があります。しかし、代引きには以下のような注意点もあります。
代引き手数料を適切に設定する
配送会社各社の代引き手数料の項目でご紹介したように、配送会社は、購入者から回収する商品代金の総額に応じて手数料を設定しています。
ネットショップ側は、配送会社に手数料が差し引かれることを踏まえた上で、適切な代引き手数料を設定する必要があります。高額な手数料を設定すると購入者の意欲が減少する可能性がある一方、ネットショップ側の代引き手数料負担が増加すると、利益率が低下する恐れがあります。
ネットショップが購入者に求める代引き手数料は、事前にシミュレーションしたうえで適切な金額に設定することが重要です。
未着・不在・返品の対応
代引きは商品の受け取り時に支払いを行うため、未着や不在の場合、代金を回収できません。そのため、ネットショップ運営者は配送業者と連携して、配送状況の追跡や再配達の手配を行う必要があります。
これらの対応により、ネットショップ運営にかかわる工数や人件費が増加する場合もあるため、注意が必要です。
返品・交換ポリシーの明示
購入者の受け取り拒否や返品希望に伴い、ネットショップ側の手間や返送送料負担が大きくならないよう、キャンセル・返品・交換の条件などを明確に記載しておくことが大切です。
キャンセルや返品に伴うトラブルを避けるため、注意事項に了承する旨のチェックボタンを付けるのも有効です。
まとめ:メリット・デメリットを理解した上で代引きを有効に活用
この記事では、ネットショップにおける代引きの基礎知識について解説しました。要点は、以下の通りです。
- 代引きは、購入者が商品を受け取る際に商品代金を支払う決済方法のこと。
- 代金の回収は、代引きサービスを提供する配送会社が行う。
- 代引きと着払いの違い:代引きは商品代金 + 送料 + 代引き手数料、着払いは送料のみ商品受け取り時に支払う。
- 代引きは購入者にとって手軽な決済方法であるが、ネットショップ側には受け取り拒否などのリスクもある。
- 配送会社の代引き手数料は、商品代金に応じて300円から1,000円程度が一般的。
代引きは、ネットショップを利用する人、運営する人にとってメリットもデメリットもある決済方法です。特徴をよく理解した上で、有効に活用するようにしましょう。
最後に、代引きについての気になるQ&Aを集めました。
代引きの気になるQ&A
代引きを活用する前に、多くの人が感じる疑問とその回答をまとめました。「商品を購入する人」「ネットショップを運営する人」それぞれの立場にわけて、気になる疑問に答えます。
商品購入者の疑問
Q. 代引きの手数料はどれくらいかかりますか?
A. 代引きの手数料は、ネットショップや配送会社によって異なりますが、300円から500円程度であることが一般的です。
Q.代引き支払い時にお釣りはもらえますか?
A.配達員は、代引き商品を届ける際に釣銭を用意しており、お釣りはもらえます。しかし、1日に何件も代引き配達が重なるなど、釣銭が足りない状況も考えられるため、商品購入者は事前に金額を確認し、なるべくお釣りの少ない金額を用意しておくと確実でしょう。
Q.代引きの支払いにPayPayは使えますか?
A.配送サービス各社(ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便)は、代引き決済のPayPay支払いに対応していません(2023年9月執筆時点)。ただし、その他の電子マネー決済に対応している場合があるため、購入するサイトで事前に確認が必要です。
Q.身に覚えがない場合、支払い拒否できますか?
A.注文した覚えがない商品が届いた場合は支払いを拒否できます。その場合、配達員にその旨を伝えて商品を返品します。
Q. 代引きの支払い方法にはどんな種類がありますか?
A. 代引きの支払い方法は、一般的に現金、クレジットカード、電子マネーなどがあります。ネットショップや配送会社によって対応する支払い方法が異なるため、購入するサイトで確認が必要です。
Q. 代引きで返品・交換はできますか?
A. 商品の返品・交換規定は、購入したネットショップの返品・交換ポリシーによって決められています。商品購入前にネットショップの注意事項を読み、確認しましょう。
ネットショップ 運営者の疑問
Q.受け取り拒否された場合、どうすればいいですか?
A.受け取り拒否された場合、ネットショップ運営者は速やかに顧客に連絡し、理由を聞きとります。その上で返品・交換規定に準じた理由がある場合、規定に則って対応します。不当な理由で受け取り拒否された場合は、商品返送費用などを購入者に請求できる場合があります。受け取り拒否に伴うネットショップ側のリスクを防ぐためにも、キャンセルポリシーなどを明確に表示しておくことが重要です。
Q.代引き決済に対応している配送会社にはどのような会社がありますか?
A.ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便、西濃運輸、福山運送などが対応しています。
Q.代引き決済を利用した費用はいつ入金されますか?
A.配送会社や契約内容によって入金サイクルは異なりますが、最短では1週間程度で入金されるサービスがあります。